第2章
破界の国編
第26話 拝啓
私は外国を倒し、8ヵ国同盟と遼源、合わせて9ヵ国と隼翔は平和同盟を結んで、満足していた。しかし、まだ平和同盟以外の地域では戦乱が続いていることも確かだ。だから、さっさと対策をとらないといけない。
だがその前に、隼翔に帰ってからは、まず由比達についての取り決めを行った。由比達は確かに私のことを処刑から助けた「万死の戦い」に参加してくれた。だが、もともと盗賊として働いていたことを不問にするわけにもいかない。
そこで、私は思いついた。新田開発だ。第一、由比達結巾の者だけで10万人もいるから、単純に食糧が足りない。そのため、新たな農地が必要だ。第二に、今までの反省をさせるなら、やっぱり農作業の大変さを知ることだ。
由比達の処分が決まったその後、しっかり休養を取り、引き続き修行をすることにした。
私は鉄を切る感覚を忘れないうちにもう一度、鉄を切ってみようと思って、鞘から天の羽衣を引き抜いた。そこで私はその時、ようやく気づいた。天の羽衣の刃がボロボロになっていることに。
外にあるグラウンドのような修行場で、私が一人うずくまりながら、すすり泣いていると、景泰がやって来た。
「舞衣様。どうされましたか?お体でも悪いのですか?」
「景泰ーε=(っ*´□`)っ。私の天の羽衣がボロボロなんだよ。」
「え?」
景泰に見せると、
「本当ですね。これじゃあ、紙だって切れるか分からないですね。」
「そうだよな。それにしてもなんで、こんなボロボロになったんだろ。」
「やっぱ、外国の分厚い鎧を切ったせいなんじゃないですか?」
「そうか。それだ。たしかに、あの時はまだ鉄を切れていたわけだから、その時だろうな。」
私はみんなを守るために、刀が犠牲になることは仕方ないとは分かっていても、やっぱり毎日一日中一緒にいる相棒のような物だったから、すごく悲しくて、その日は食事が喉を通らなかった。
次の日、私は刀を直してもらうために、広志さんのところに行った。久しぶりに、神朴山を登ると、改めて、あの時はよく登ったなと、過去の自分すごいなと感心していた。
そして、ようやく頂上について、益田家に行くと、はじめさんが、迎え入れてくれた。広志さんは、リビングでのんびり飲み物を飲んでいた。
すごい言いづらかったが、私は、刀がボロボロになってしまったことを、広志さんに打ち明けた。すると、
「おいおい。刀をボロボロにしたって?しかも、あれは俺の人生最後の傑作だぞ。それに、あの鉱石も高かったのに。まあ、いいや。それだけ激しい戦いだったんだろ。後でこの刀のことを弔っときなね。」
「弔うってことは、やっぱ、もう駄目そうなんですか?」
「うん。ここまでひどい傷だとな。」
私はもちろんこの刀を再生することを諦めたくはなかったが、そんなことを言っていては広志さんへの次の頼み事が、余計しづらくなると思ったので、この刀のことは諦めた。
「そうですか。それで、すごく言いづらいのですが...。新しい刀作ってくれませんか?(^-^)」
「うん。無理。」
「ありがとう。って、えー!無理って言ったー?」
「あぁ、無理。」
「そこをなんとかしてくれませんか?」
「無理って言ったら無理。」
「えぇー。そんなぁ。」
「刀を壊したのはお前なんだから、仕方ないだろ。まあ、作りはしないけど、前に作った刀ならあるけどな。」
「え!?w(゜o゜)w」
「お前の父親にな、お前が生まれる前に頼まれてさ、誕生祝いに作ってくれ。って言われて、俺は、無理って、言ったんだけど、どうしてもって言ってずっと居座り続けるから、作ることにしたんだ。
けど、産まれてきて、女の子っていうのが分かったからなのか、取りに来ないから、俺も作ったっきりしまったまんまでどこにしまったのか忘れてて、こないだ久しぶりに見つけて、懐かしんでたら、隣にお前の父親からの手紙が挟まってたんだよ。
はじめに聞いたら、前に俺がいない時に来て、そん時に置いていったんじゃない?って言ってたから、まあそうかもなとは思ったんだけど、とにかくそんなことはいいから、読んでみな。」
「あ、うん。」
手紙にはこんなことが書いてあった。
「広志。刀わざわざ作ってもらったのに、取りに行けなくてごめんな。最近、各地で戦乱が続いているから、波流の国でも警戒態勢に入っている。俺の子供はそんな時代に産まれてきた。俺としては、家族まで戦争に巻き込みたくない。
ちなみに、刀を作ってもらったのは、剣道は心を磨くのに最も効果的だと俺は思っているから、もし俺の子供も剣道をやりたいとなったら、いつか刀を欲しがるかもしれない。そんな時に一流の鍛冶職人が作った刀を俺の子供には持たせてあげたかった。
でも、こんな時代では危険すぎると判断した。だから、広志が作ってくれた刀は広志に持っていてほしい。そして、もし俺の子供が刀を取りに来るようなことがあれば、その時はきっと覚悟を決めた時だ。俺の子供にその刀を渡してほしい。そして、この刀の名前を俺の子供に教えてあげてくれ。平和を作る刀『舞衣』と。」
読み終えた時、私は感動して泣いていた。人生でおそらく父からの最初で最後となる手紙に、こんなこと書かれたら、泣いちゃうだろ。バカ。
その後、何度読み返しただろう。そして、何度泣いただろう。父も天国で私の活躍を見ているかな。どうだろう。父のことだから、母に甘えるので忙しいか。気付いたら、私は寝ていたようで、はじめさんが布団まで私を運んでくれていたそうだ。
次の日、私は起きて、さっそく広志さんから新しくもらった刀、「舞衣」を使ってみることにした。
刀を鞘から抜くと、前の天の羽衣とは違い、黒色の刀だった。まさに、漆黒って感じだ。かっこいい。
それと、天の羽衣と同じで普通の刀よりも軽くて、私には使いやすそうだ。おそらく広志さんが、非力な浅霧家を見て、使いやすいようにできるだけ軽くしてくれたのだろう。でも、丈夫さはもちろん問題ない。
ちなみに、この刀で鉄を切れるのか、広志さんに聞いてみたら、
「は?鉄を切れるか?切れないに決まってるだろ。」
「だって、前の天の羽衣は鉄を切れましたよ。」
「え?そうなの?まあ、たぶん、それはお前がすごいからじゃなくて、刀の素材の混沌石がすごいからだ。自惚れて、鉄を切ろうとしたら、また刃がボロボロになるぞ。」
「やっぱり、天の羽衣が特別だったのか。まあ、もっと自分が強くなれば、外国を倒した時の自分よりも強くなれるかもしれないし、もう鉄は切れないけど、頑張ります。」
そう言って、いろいろと感謝を述べてから、益田家を離れた。
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