第14話 ぎゃああぁあぁぁあ!

 神朴山に入ってみると、すごく霧がかかっていて、しかも天候も変わりやすく、地面がぬかるんでいて、とても危険だ。

 さらにところどころ急な斜面や崖などもあり、父がこんな山を登っていたと思うと、あの人やっぱすげーんだなと思って、感心していた。


 途中で大雨が降ってきて、このまま登ると滑って危険だと思ったので、ちょうど近くにあった洞窟に入った。


 こんなところにこんなタイミングで洞窟があるなんて、私はすごい運がいい女だぜ。と思った。


 そして、はやく雨止まないかなと思っても全然止まなくて、暇で暇でしょうがないので、洞窟の中を探検してみることにした。


 中は暗いので、ろうそくを灯して入っていった。


 中は迷路のようになっているというよりかは、ただ一本道が続いているような感じで、なんも面白みがないが、さっきから気になることがある。後ろから足音が聞こえる気がするのだ。誰だ?

 でも、樹さんの話では、この山には基本的にあの方とその一族の者くらいしかいないらしいから、もしかして、山に入った時からつけられてた?おそるおそる後ろを向いてみると、


「ぎゃああぁあぁぁあ!」


「うわぁっ。びっくりした。」


 そこにはおじさんがいた。


「すいません。急に大声出して。それでおじさんは、誰ですか?」


「あ、私はこの山の管理者であり、世界一の鍛冶職人と呼ばれている益田広志の弟の一(はじめ)と申します。」


「えー。そうだったんですか。私は一応この前、この国の国王となった浅霧舞衣と申します。」


「あ、え?国王様なんですか?ここは、外界とは離れているので、あんまり情報がこなくって。というか、すごく若い方ですね。」


「そんなこと言われたら、照れるなぁ。まあ、確かに16歳で王は早いか。それで、ここにきたのは、他でもなくて、あなたのお兄さんに私用の刀を作ってほしいからなんですが。」


「まあ、あくまで私からは何も言えないんですけど、あの人は頼んだら作ってくれるような人ではありません。」


「そのことなら、聞いています。なんとしてでも、刀を作ってもらえるように努力します。ちなみに、はじめさんはなんでこの洞窟にきたんですか?」


「たまたま町に行こうとして、下山していたら、あなたがここに入っていくのを見かけたので、止めようと思って。」


「止める?」


「この洞窟には、猛獣が潜んでいるのです。洞窟の中にいればおとなしいですが、人なんかが洞窟の中に入たら、一溜りもないです。たった一体で町一つを破壊するほどの力を持っているので。」


「えぇ!危なかったぁ。わざわざ止めてくれてありがとうございます。」



 その時洞窟の奥から何かとんでもない音がしたのが聞こえた。


 私とはじめさんは、手足を震わせながら、顔を見合わせて、とっさに逃げ出した。



 やったー明かりが見えた。と思ったけれど、洞窟の外はまだ雨が蛇口をひねったように降っていて、危険と危険に挟まれた。そして、獰猛な猛獣がもう近くまで来たので、私は覚悟を決めて、


「はじめさん下がってて。私が仕留めるよ。」


「えぇ!いくらなんでも無理ですよ。特に女性であるなら。」


 猛獣は、私よりはるかに大きく、(私が小さいとか関係なくね!)5mくらいあるんじゃないかというくらいであった。私は決死の覚悟で壁を駆け上って、猛獣の背後に行き、その壁からジャンプして後ろから思いっきり猛獣の首めがけて峰打ちを決めた。


 どさっ。猛獣が倒れる音がした。


「え、すご!すごいです。舞衣様。無理とか言ってすみませんでした。」


「ちょっと、私も焦ったがな。なんとか、上手く決まったので、よかった。」


 そして、さすがに猛獣が起きた後にもし町に来たら大変なので、持ってきていた食べ物を猛獣がいるところから、洞窟の奥まで少しずつ落としていって、拾い食いさせて、奥まで行かせる作戦にした。



 その後、雨が止んでから洞窟を出ると、2重になった虹がかかっているのを見て、きれいだなって思って、写真でも撮ろうと思った時に、あぁそうだ。そういえば、今はスマホとかないんだった。と思った。


 そういえば、死ぬ前に誰かにいろいろ入ったリュックを渡したような気がしたのを思い出したが、そんなことより、お腹が減ったので、何か食べようと鞄を見たが、全部さっきの猛獣の拾い食いのために使ってしまっていた。私がガーン😨という顔をしていると、それを見かねて、はじめさんが、


「私の家に着いたら、美味しいご飯をご馳走しますから、はやく登っちゃいましょう。」


 そう言われて、私はパァっと笑顔を取り戻し、頂上へ向かった。


 そういえば、はじめさんは町へ行こうとしてたのに、私がその予定を潰しちゃったから、今度町に呼んであげようかなと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る