第13話 歓迎
隼翔の国に入ると、私達に協力してくれた元国王軍。いや、もう現国王軍と言ってもいいかもな。が、向かい受けてくれた。すると、皆が樹さんの存在に気付き、皆がお辞儀をし、その内の一人が樹さんの前に来て、
「お待ちしておりました。お久しぶりです。王様。」
「元気だったか。後でまたたくさん話そう。とりあえず、農民も含めて集めてもらって、城の前でこれからのことについて話したいと思う。それと、来賓だ。手厚くもてなしてくれ。」
「承知しました。準備を致しますのでしばらくお待ちください。」
周りからはたくさん「王様。」という声や樹様という声が聞こえてきて、感動して泣いている者もいた。本当に愛されているんだなと思って、なぜか私も心が熱くなった。なぜか、父を思い出す。
そして、城へ着くと、樹さんは王様らしい服を着ていた。こうして見てみるとめっちゃ王様だなと思った。いや、めっちゃ王様ってどういうことって思うけど、めっちゃ王様なんです。
私がカッコいいなぁというふうに目を輝かせていると、それを察したのか
「今度舞衣様にも、あのような服をお作りしましょうか?」
「お、よく分かってるじゃん。杉崎。カッコいいの頼むな。」
そして、準備が整ったらしく、樹さんがスピーチを始めた。
「私は元国王片岡樹です。現国王の安斉が横暴をなしたことは、私が安斉との戦いにやぶれたからこそ起こってしまったことであります。みなさんには本当に迷惑をかけました。また、ご心配をおかけして、本当にごめんなさい。
今日みなさんに集まってもらったのは、これから先のことをどうするかということです。あくまで私は元国王であって、いろいろと決める権限はないのかもしれないが、一個人の意見として聞いていただきたい。そして、もしよければそれに賛同してほしい。私は次の国王に浅霧舞衣様を推薦したい。」
みんなの中にはてなマークが浮かび上がった。そして、樹様がならないの?という声が聞こえてきた。そして、誰よりも私が一番びっくりしていた。
「まず、知らない人のためにも紹介しましょう。この方は私個人とも友好のあった亡き波流の国の国王の浅霧明正殿の娘であり、私の命の恩人。そして、国王を捕らえ国王軍を倒すために元国王軍を動かし、勝利に導いた若き女性のことです。」
「樹さんこんな話聞いてないよ。皆はあなたについていきたいというのに、私が国王ってなってもついてきてくれないよ。第一、私早起き苦手だもん。国に何かあっても起きれるか分からないよ。」
「皆に聞こえていますよ。舞衣様。」
「あ、え、あ、恥ずかしい。」
私は顔を赤らめて、手で顔を隠した。
国のことも国王も救った人とあれば、皆も私のことをさすがにすごい人だと思うと、畏怖して距離ができてしまうものだけど、人間らしさがこの皆に初めて挨拶する場面で出たことで、逆に好感を持たれたのか、周りからは温かい拍手がおこった。
「ほら、みんなも舞衣様のことを迎えてくれるようですし、それに私も別に国王にならないものの、初めて国という大きなものを運営する舞衣様が困った時にサポートできるように側にいますから、安心していいですよ。」
「じゃあ、改めて挨拶ということで、私、浅霧舞衣は現在16歳で、亡き父の家臣であった5人とさらにこの間仲間になった元山賊の50人の仲間と共に行動してきました。
えーと、こういう大勢の前で話すことも慣れていないし、あんまりリーダーっぽくもない私ですが、みんなのリーダーになったからには、私の夢を皆に共有したいと思います。それは、平和な国を実現することです。
もちろん、急にリーダーが変わって、私についていきたくないという人もいるでしょう。もちろん、そのような人は私についてこなくてもいいと思います。でも、前国王の安斉がやったように農民を虐げるような者は私は許したくありません。
それと、前国王の安斉の処罰ですが、もちろん処刑したいという人もたくさんいることでしょう。私もできれば皆の意にそいたいが、できれば安斉に農民の大変さを実感させたい。改心することはないかもしれないが、罪を償わせることにはなると思う。」
いろいろ批判はあるかと思った。というかむしろ全員に批判されるとすら考えていた。だが、拍手が鳴り響いていた。もちろん、不満そうにしてる人も中にはいたが、多くは納得したようだった。嬉しくて私は急に泣き出してしまった。
「舞衣様。大丈夫ですか?」
「はい。思ったよりも皆が納得してくれたようで、嬉しくて。それに、ようやく自分の努力が報われ始めた気がして、つい涙が出てしまいました。」
その後、私は疲れて寝てしまった。
次の日。
「そういえばさ、この国って鍜治屋が有名だよね。たしか。」
「そうですね。全国にある数ある名刀がこの国で作られたらしいですからね。」
「じゃあさ、私達の武器もそこで作ってもらう?」
「いいですね。けど、頼んだらすぐに了解してもらえますかね。」
「一応、私はこう見えてもこの国の王だから、たぶんお願いしたらいけるんじゃないかな?」
「まあ、確かにそうですね。」
「それで、どこにいるんだ。その職人。」
「樹さんに聞いてみますか。」
私達は樹さんのもとに行って聞いてみた。
「この国で有名な鍛冶職人ってどこにいるんですか?」
「え?鍛冶職人ですか?」
「はい。」
「一応言うと、隼翔の国と元波流の国の間にある神朴山の頂上に家があるので、そこにいます。でも、」
「でも?」
「行っても、本当に作ってくれるか分からないし、もしかしたら返り討ちに合うかもしれないです。」
「え?どういうこと?」
「あの方は鍛冶職人としての腕は確かにすごくて、長年受け継がれてきた技術を持っております。ですが、気難しい方で、自分が気に入った人の刀しか作ってくれません。
それに、あの方自身もすごい剣術を持っていて、訪れた者を斬り殺すなんてこともあるくらいとんでもない人です。」
「本当にそんな人がすごい鍛冶職人なのか?」
「腕が立つのは本当です。全国探してみてもあんなにすごい人はきっといません。ですが、今まであの方が頼まれて刀を作ったのは2回だけで、そのうちの一回はあなたのお父様です。」
「父の刀を!それなら、なおさら私の刀を作ってもらうことにしよう。」
昔から神朴山は一人で入らないといけない決まりがあるらしいので私は一人で神朴山に行くことにした。
樹さんがあの方という鍛冶職人とは一体どんな人なのか。
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