第7話 身長

 ついに、落とし穴を埋め立てられ、絶体絶命のピンチとなった。


「弱い者いじめはつまんないな。今日はせっかく俺らに歯向かった者がいるというから、楽しみにして来てみれば、なんだこのざまはよぉ。もっと俺を楽しませてくれよ。」


「私達には頼れるアタッカーのジイと景泰がいる。お前らなんかに負けるわけないぞ。」


「そうか。なら、一つ質問する。お前らとしてはこの村の誰一人も犠牲にしたくないだろ。」


「あぁ、そうだ。誰一人として、失いたくない。」


「俺らはそこらへんにいるガキ一人くらい簡単に殺せる。それは、お前らとしても嫌だろ。」


「お前、そんな卑怯なことをするのか?」


「そうじゃない。こっちとしても、そこにいる強そうな二人と戦いたくないし、お前らとしても、誰一人として犠牲にしたくない。

 つまり、お前らの代表とタイマン(一対一)で勝負だ。そうすれば、どっちの要求も通るだろ。

 ちなみに、条件は、タイマンでやってるやつ以外が手を出したら、俺の部下達であっても容赦はしないこと。

 あと、負けた側は勝った側の要求を必ずのむこと。それと、こっちがタイマンの相手を選ぶ。そこの女だ。さっきから偉そうにしてるお前だ。」



 私は後ろを見てみたが、後ろには男しかいないし、こいつは誰のこと言ってるんだ?



「お前だよ。お前。今、後ろ向いてた。」


「え?私?まあ、偉いからね。偉そうぶってるわけじゃないんだよ。実際に偉いんだもん。」


「なんか、むかつくな。このチビ。」


 なんか、急にあの女の周りの強そうな男どもがざわつきだした。というか、あの女なんかさっきまでのアホそうな感じと雰囲気が違くないか?


「お前今、何て言った?」


「チビ!」


「私のコンプレックスを言うなぁ!タイマン受けてやるよ。ただし、後悔しても知らないからな。」



 この女なんか怖いな。たった一言だけで、急に別人みたいになったな。でも冷静さを欠いてるし、効果的だったんじゃねーか?というか女に、この俺が負けるわけねーだろ。



 こいつ私のことをチビっていったからには、それなりの報いを受けさせないとな。




 戦いが始まった。


「これからは実況中継、私、多田景泰がお送りいたします。解説の三浦信忠さん。この戦いどうなると思いますか?」


「やっぱ、姫様が勝つと思いますね。なんと言っても、私の弟子ですから、負けるようであっては困りますねぇ。」


「そうですか。おおっと、ここで刀と刀がぶつかる。凄まじい音ですね。正直姫様の真剣を使った対人戦は初めて見るのですが、どこにも隙がなくて、これは相手にはしたくない。そんな感じですが、どうですか三浦さん。」


「さすがといったところですね。相手が力を込めてパワーで押そうとしてるところを上手く力を分散させるように受け流すと言うんですかね。上手いです。さすが我が弟子。」


「おおっとここで三浦さんのドヤ顔が決まった。間違えて変な実況をしてしまったんですが、やばい。相手が刀を振りかざしている。

 まさに剣道で言うところの面を食らわそうとしているところ。姫様が上手く避けて、棟や峰と呼ばれる刀の刃がついてない方で、相手の胴を姫様が思いっきり打った。これはさすがに痛いか、相手が倒れました。勝者姫様。」


「ちょっと、実況なんかしてないで、ちゃんと応援してよね。というか前にいろいろ技名つけたんだから、それ使ってよ。」


(姫様、ちゃんと私の実況を聞いておられたのか。感動です。)

「えぇっと、今回のでいくと、上手く受け流していたのが、桜華。最後に胴に当てた技が、瞬神李飛。それに、今回は実況中に言わなかったけど、すばやく連撃を決める

、陽梅(ひめ)。この3つですね。

 あれ、けどこれ、桜梅桃李から名前とってきてると思うのですが、なぜ桃だけないんですか?」


「あぁ、それは、ちょっとね。私あんまり桃好きじゃないから。」


「あぁそうだったんですか。(えー!そんな理由だったんだ。その技名聞いた時からずっと考えてたのに。あぁ、それにしても本当に立派になられた。)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る