第3話 2年後

 ついに、ここでの言葉も理解してしゃべれるようになり、1人でも歩けるようになった。


 ここ2年間で大変だったことといえば、赤ちゃんらしくいるということだ。もちろん、私は自分が赤ちゃんだった頃の記憶なんてないし、自分の弟妹や子供もいなかったから、赤ちゃんがどういう行動をとるのか分からなかった。


 それに、大人はやることがあっていいけど、こっちはずっと暇で暇で仕方がなかった。1日のスケジュールはまさに睡眠と食事くらいだ。


 こんな堕落したような生活を送るのは、退屈でしかたなかったが、自分の母親が美人だったから、もうそれで我慢した。


 前世は報われない顔をしていたが、それでも努力してタイムマシンを開発して、今に至ったわけだから、やっぱ、努力は報われることもあると思えば嬉しい。自分がどんな顔になるのかだけでも将来が楽しみである。




 そして、この2年間で1番びっくりしたことは、ようやく言葉を理解できるようになった時に急に怖くなったのだ。


 何か気になるか?それは、実は自分が国の主の娘であるということだ。なんか、やけに自分の両親は高そうな服を着ているなと思ったら、まさかの国王だとはね。これは、びっくりしすぎて、みんながいる時に


「ええええーーーぇ!」


 って叫んじゃったけど、その後に上手く泣くふりをしたら、みんな、「大丈夫?」みたいな感じになってくれたから、危なかったけど、なんとかなったわ。


 ということで、これから私のいや、浅霧舞衣の物語が始まる。というか、なんかすんごい物語の主人公感ある感じで書いてるけど、まだ2歳だし、しかも、戦国時代において女性は主人公というより、そのサポートをするタイプな気がするのだが、あくまでこれは私の人生なんだから、私が主人公ですからね。




 ちなみに、自分の国の紹介をすると、国の名前は波流(はる)で、残念ながら小国です。


 なんとなくの地図を見せてもらったところ、日本の中央あたり、だいたい長野県とかそこらへんに位置してるらしくて、周りの国は、大国やそこそこ強い国が多い。


 そこで、近くの大国である遼源に仕えるような形でなんとかやっている。そのため他の国はうかつに手出しできないし、ある意味でこの国があるから、平穏があるといっても過言ではないと思う。




 そして、この国の主であり、私の父親でもある浅霧明正は現在27歳で若干若い気もするが家臣にも慕われている。


 さらに、家臣だけでなく農民にも慕われているようで、今着ている高そうな黒い服も農民からプレゼントという形でもらった服らしい。他にいい服がないからなのか、それともよっぽど農民からもらったのが嬉しいのか、よく着ているところを見かける。



 そして、父の何よりすごいところは、剣の腕がたち、小国といえども、あなどれない強さである。噂によると、父は「剣聖」と呼ばれているらしい。他の国にもそういう称号がついている人はいるらしいけど、日本全体で3人しかいないらしい。


 だからこそ、若くしてこの国をまとめ上げているのかと最初は思っていたが、どちらかといえば人柄が良すぎるせいかもしれない。


 と言っても、家臣の前ではすごく真面目で立派な人であるが、私や妻の前では、すごくデレデレしている。今も昔も人の根本というのは変わらないなと常々思った。




 そして、その浅霧明正を支えている、その妻であり、私の母親でもある、浅霧京子は現在25歳とこちらも若く、なにより美人だ。内助の功という言葉が似合う人柄で、夫の明正を甘やかしている張本人である。


 2人は幼なじみらしく、こんな幸せな家庭がいつまでも続いたらいいなと心の底から思うくらい、仲むつまじく愛おしい。




 けれど、時は戦乱の世。国の者が幸せになるためにも、強いリーダーがこれから先も必要だ。そして、この時代においてはやはり男性がふさわしかった。


 だが、2人の間には、今のところ私しか産まれておらず、これは国の存亡の危機なのではとささやく者もいた。まあ、まだお二人若いけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る