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その後、叔母は何もなかったかのように家に戻ってきました。
翌日、帰ってこなかった祖父は行方不明ということになりました。
でも、俺は聞いていました。
叔母が電話で死体の処理について誰かと話しているのを……
「あの時と同じように、お願いします。いなくなった事にすればいい。死体さえ見つからなければ、七年で死亡した事になる。大丈夫、姑の方は、最近物忘れが酷くなってきていて……ええ、そうなれば遺産は全て私の方に。進次郎には、一円だって渡しませんよ」
いつも笑顔で、家族を大事にしてくれる叔母の裏の顔を知りました。
それで、俺はこれは警察に助けを求めようと、祖父が殺された証拠が何か、残ってはいないかと調べに一人でイノシシ岩まで行きました。
その時、人影が落ちるのを偶然見たんです。
そして、それがあの日、叔父に見せてもらった母の写真の女と同じ顔をしていた事に気がつきました。
その時、思ったんです。
母は、ここで死んだのだと。
母の死にも、叔母が関わっているんじゃないかと……
◇ ◇ ◇
「————ここに照明をつけたのは、この現象を村の人々に見てもらおうとしたんです。人が落ちたとなれば、現場の調査を警察がしてくれないかと……でも、警察は死体のない、被害者のない事件の捜査はしてくれませんでした。どうしようか考えた時、須之部さんの記事を見たんです。殺人事件の解決にある霊能力者の力が役立ったと……」
「……それで、俺に依頼を?」
「はい。まずは本当かどうか、調べる必要がありました。須之部さん自身は、見える人ではなかったので……岩が動いたという、嘘の霊障を伝えて反応を見たんです。偽物は、岩の伝承を信じて心中した二人の霊が————とか、山の神がどうのこうのと適当なことばかり。でも、あなたは時間帯と、そして、母の顔まで見えていますよね?」
友野は深くため息を吐いた。
そんな回りくどい、ややこしいことをしなくても、最初から全て話してくれていればよかったのに……と。
「見えてますよ。あと、ずっと言わなかったんですけどね……」
「なんですか?」
「あなたの後ろにいる女性も見えてます」
「え……?」
永津は振り返ったが、何もいない。
村役場の駐車場があるだけにしか見えなかった。
「自分の背後霊って、普通は自分じゃ見えないもんなんですよ。ずっと護られているようだったので、俺はあなたが悪い人だとは思えませんでした。何か違和感があると思ってはいましたけど……そういうことだったんですね」
友野の目には、永津の婚約者だったなぎさの姿が見えていた。
心が壊れた人間にしては、随分力強い守護霊がついているものだと思っていたのだ。
多くの場合、心が壊れた人間には、その闇に吸い寄せられるようにあまりよろしくない霊が憑いていることが多い。
「まぁ、とにかく、あなたのお父さん……いえ、育てのお父さんというべきですかね? 純太郎さんの霊が訴えているように、すべて明美さんの犯行だと警察にわからせなければならないと……そういうわけですね?」
「そうです」
「それなら、まずは創一郎さんのご遺体を見つけるのが先ですね。ご遺体さえ見つかれば、警察は動きます————ナギちゃん、紙とペン持ってる?」
「もちろんですとも!」
渚から紙とペンを受け取ると、友野はスラスラと模様のような、記号のようなものを書いて、渚に手渡した。
「……え? なんですかこれ?」
「君が大好きな、見えるようになる札だよ。即席のものだから、数日しか使えないけど……」
「おお!! やった!!」
これで友野と同じものが見えると、大喜びしている渚。
「喜んでる場合じゃないよ。永津さん、創一郎さんが行方不明になった後、あなたはどこを見ました?」
「え……?」
「村中探し回ったりはしていないんですよね?」
「はい。だって、祖父はあの崖から突き落とされて、死体はあの医師と叔母がどこかにやってしまったようでしたし……探しても見つからないのは明らかでしたから」
「創一郎さんの霊は、ここに残っていない。通常、霊は死んだ場所か遺体のそばにいるものなんです」
「え……?」
「その偽物の医師の背後にいた多くの悪霊の中に、創一郎さんの顔はありましたか……?」
「い、いえ、なかったと思います」
「それなら、探しましょう。まずはこの村から……創一郎さんの霊がいないか」
おそらく、その場所は七年以上誰も踏み入れることがない場所。
畑や他人の住んでいる家の近くだと、工事やなんかで不意に見つかってしまう可能性が高い。
村中を走り回り、心当たりのある場所をしらみつぶしに探した。
そうして、23時を過ぎた頃。
「あ!! いました!!」
渚が創一郎の霊を見つける。
そこは、夫の純太郎が死んでから、明美の所有地となっていた————今は使われいない、じゃが芋畑だった場所。
農作業用の重機が置いてある倉庫の裏側。
「————っていうか、創一郎さんだけじゃなくて、他にもいっぱいいるんですけど……」
何もない地面を見下ろし、そこにいた霊たは指をさす。
ここに、自分の死体が埋まっていると、訴えるように————
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