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「なんでここに……?」
「それはこっちのセリフなんですけど!! 一体何してたんですか!? 電話しても全然繋がらないし!!」
スナック夜蝶で、友野と一緒に出て行った怖い顔の刑事が
しかし、こちらも電源が入っていないとアナウンスが流れたため、やはり二人とも同じ場所にいるのだろうと思っていたが……
「————おい、静かにしろ友野。住人に知られたらどうする」
まさか東警部補も同じ502号室から出てきたことに驚く渚。
それに、玄関の靴を見るとあと最低でもあと二人はいる。
「なんだ友野、お前どうやってナギちゃんを呼んだんだ?」
「呼んでないですよ。呼べるわけないでしょう? 俺のスマホは壊れてるんですから」
「えっ!? 壊れてる!? 機種変したばっかりじゃなかったですか!?」
つい先日、新調したばかりなのになぜそんなことにと首をかしげる渚。
「それはあの強烈な磁場のせいで……って、廊下で話す話じゃないね。とりあえず、中に入って」
友野に促されて、渚は502号室に入った。
隣の501号室と全く同じ間取りだが、ほとんどものがないガランとしたリビングがすごく広く感じる。
カーテンが開いていて、白い壁が余計明るく見えるせいもある。
窓の前には三脚に乗ったビデオカメラが三台置かれていて、どれもレンズは窓を向いていた。
「これって……まさか——……」
中にいた残りの二人、東の相棒である
向かい側の別のマンションに容疑者が出入りしているのを、見張っていた。
「見ての通り張り込み中でな……あまり俺たちがここにいることを住人に知られるわけにはいかないんだ。黙っておいてくれるか?」
「ええ、まぁ、それはいいんですけど……どうして、先生が? 何か霊的なものが絡んでる————とかですか?」
普通の事件なら、友野に東が協力を頼むはずがない。
渚はそれなら、なぜ協力する前に自分に話してくれなかったんだと友野を睨みつける。
「そんな目で見ないでよナギちゃん。さっきも言っただろう? スマホが壊れたんだってば……」
「嘘ですね。最初から私に内緒にしたんでしょう? ひどいですよ、助手である私を呼ばずに……私の好きな類のことですよね?」
「ま、まぁ……」
友野は渚と絶対に目を合わせなかった。
オカルト好きの渚に事件のことを話せば、絶対についてくるし、余計な苦労をさせられるだろうと思っていたからだ。
それに、場所も場所である。
「————で、ナギちゃんは何でここに? 誰か知り合いでも住んでるの?」
「いえ、依頼人ですよ!! このマンションで起こってる怪現象を自分のせいにされて困ってるっていう……かわいそうな人なんです。見た目が魔女に似てるってだけで、魔女扱いされて、住人たちからいじめられてるんですよ?」
「————魔女?」
カメラのモニターを見ていた南川は、渚の口から魔女という言葉が出て、視線を渚へ移す。
「渚さん……それって、隣の501号室の……?」
「ええ。葛城麻里子さんです。先生と全然連絡がつかないから、先に私がこのマンションを調査してみようと思ってここに。南川刑事、麻里子さんのこと知ってるんですか?」
「いや、その……管理人室でこの部屋の鍵を借りた時、言ってたんです。最近立て続けに自殺する人がいたり、事故にあったり……おかしなことが起きているのはその501号室の魔女のせいだって」
「管理人さんが?」
「ええ、それで、この張り込みついでに魔女を逮捕してくれって……」
魔女の逮捕なんて、できるわけがない。
本当に管理人の言う通り、その数々のおかしなことの原因が魔女のせいだとしても、何か証拠があるわけでもないのだ。
「それで、この事件が片付いたら、友野先生に一応見て回ってもらおうかと思ってたんですが……」
「……え、俺その話、聞いてないんですけど?」
友野はそんなことは初耳で、嫌そうな顔で南川の方を見ながら言った。
「まぁ、確かに妙な気配は感じてたけど……あの事故現場、ちゃんと確認してないけど、何かいたし」
「な、何かって?」
やっぱりこのマンションに何かあるのかと、南川は不安になる。
幽霊や妖怪の存在を南川も信じてはいるが、怖いものは怖いのだ。
隣にいたカメラ担当の警官はそんなものいるわけがないと呆れていたが……
「黒い腕————みたいのが地面から出てたんですよ。三本くらい」
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