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「その祭りと、羊の関係性は? それに、呪いのせいだって、言っていたけど————」


 ジュリは、ミクが死んだのは呪いのせいだと言っていた。

 祭りと呪いに、一体何の歓迎があるのか、なぜ羊なのかわからず、渚が尋ねると、ジュリは膝の上で拳を握りしめる。


「実は、ミクがあの老人ホームに出入りしているのがスクープされてね、ボランティア活動をしていることにして、配信用の動画を収録することになったの。復帰後に公開しようか……って。普通の祭りだったし、元気な姿を見せようと」


 辻がカメラを回し、ミクとジュリの様子を録画していたそうだ。

 焼きそばや焼き鳥、クレープなんかの出店もあって、表向きはただの祭りだった。


「でも、私たちと他の参加していた何人か若い人たちが奥の部屋に案内されて————……そこに、祀ってあったのが黒い羊の像だった。そして、あの神代って霊媒師が言ったわ……選ばれた人は、と」


 流石に、この時の映像は撮れていないが、神代は、それがまるでとても素晴らしいことで、神の使いになれるのだと、誇らしいことなのだと言ったらしい。

 ジュリたちは戸惑ったが、他の皆が拍手をする。

 嬉しそうに、「素晴らしい! 是非とも私をお選びください!」と、それは異様な雰囲気だった。


「神代が話している間に、いつの間にか白い服を着たほほえみのスタッフが部屋の入り口を塞いでいて……私たちは部屋から出ることがでずに、そのおかしな儀式に参加させられたわ……崇高なことだと言われたけど、意味がわからなかった。だって、まるでそれは呪いの儀式みたいだったのよ……」


 部屋の電気が消され、何十本ものロウソクに火が灯される。

 参加者はスタッフに小指の腹に針を刺されて、何か液体の入った一つの杯の中に血を一滴垂らした。

 神代はその集められた血と液体の混ざり合ったものを、羊の像に頭からかけたそうだ。

 ポタポタと液体が滴り落ちる音が、今でも鮮明に耳に残っている。


「その時は、別に何も起こらなかった。だから、きっと私たちは選ばれなかったんだろうと安心してたわ。っていうか、そもそもそんなもの自体信じてはいなかったから……でも、その後から、未来がおかしくなって……————」


 ミクはきっと、あの儀式で羊の呪いにかかったのだと、ジュリは確信している。


「未来は、羊になる前に自殺したの。あの子、自分の顔とスタイルには絶対の自信があった。そんな子が、自分の姿が羊になっていくなんて、耐えられるものじゃないわ。普通の人間だって、自分がそんな姿に見えたら怖いでしょう? だから、首を————吊って……」


 ジュリも辻も、ボロボロと涙を流しながら訴える。

 こんなことになるなら、無理にでもあの時、ミクを連れて逃げればよかったと————後悔してもしきれないと。


「あの子、死ぬ前にもう一度神代のところに行ったのよ。そしたら、これで良くなったって、金色のおふだをもらったって言って……またいつもの明るい笑顔に戻っていたのに……それなのに——……ダメだった」


 その時、その札さえあれば、別の人が羊になると言われたそうだ。

 あの時、血を杯に垂らした別のだれかが……

 新しい羊は必ず選ばれるのだと————


「それに、未来の部屋には遺書もあったのよ。一番最初に、首を吊っていた未来を見つけた家政婦さんが、そう言っていたわ。でも救急車や警察、それに事務所に連絡したりしている間に、いつの間にかなくなっていて————それで、警察は自殺か他殺か決めかねているの……」


 羊になる前に、ミクは自ら命を絶った。

 ジュリは自分の姿が羊に見えるなんて、そんなの何かの間違いであって欲しいと思っていた。

 だが、先ほど車内で一瞬ではあるが、そんなありえないようなことが起こっている。

 このままでは、次に羊の呪いのせいで殺されるのは自分だ。


「私、渚ちゃんのこういう……呪いとか、祟りとか……——そういう怖いものに対する知識は信頼しているの。だから、こうして、会いに来たの。友野先生、私、どうすればいいですか? どうすれば、この呪いを解くことができますか?」









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