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「い、今更なに言ってるんだよ、友野!! お前じゃ無理なら、一体どうしたらいいんだ……! このまま俺も番組も死んじまうのか!?」
広嶋は友野の発言に焦り、泣きそうになる。
彼はもともと、幽霊や呪いなんて信じるタイプの人間ではなかった。
入社して間もない頃、心霊系の番組にスタッフとしてか関わったことは何度かあるが、そのどれもがインチキで、嘘だったことを知っているからだ。
それでも、友野を頼ったのは広嶋が大学進学で実家を離れていた頃、弟が奇妙な霊に取り憑かれておかしくなったのを友野が解決してくれたことがあるのを思い出したから……
母親からその話を聞いた時は、信じられずに話半分だったが、この半年で立て続けに起きている関係者たちの自殺もきっと、そういう部類のものだと————
「————ああ、先輩は死ぬことはないので、安心てください。大丈夫です」
「え……?」
「ただし、番組でこれを放送するのはやめた方がいい。人の命が大事ならそれは諦めてください」
「ど、どういうことだ?」
「……それより、問題は社長さん————……」
友野は、丘山に向かって言った。
「あなたの方は呪われています。どうします?」
「…………」
丘山は友野の顔を見て、何度も瞬きをする。
丘山からしたら友野は社長室に入ってきて早々、不機嫌な顔で、しかも何も言わずに勝手に布を取り払ってしまうような失礼な男だ。
広嶋から霊媒師を連れてくると言う話は聞いていたが、丘山はあの箱の呪いを信じてはいなかった。
あの箱を開けた場所にいたスタッフや出演者は確かにこの半年の間で六人も自殺しているそうだが、ただの偶然だろうと……
何しろ、死んだのは番組側の人間であって、丘山酒造の人間ではない。
身内が立て続けに……というなら、話は変わってくるかもしれないが、丘山にとっては他人事だった。
しかし、丘山は友野の問いに絞り出したような、か細い声で答える。
「助けて……ください」
そして、まるで子供のように嗚咽しながら泣き出してしまった。
認めたくはなないが自分が呪われているという自覚が、丘山にはあったのだ————
◾️ ◾️ ◾️
去年、新社屋が完成し、元々あった自宅兼会社の古い建物は解体することが決まっていた。
解体工事の前に荷物の移動ついでに古い蔵の整理も行なっていた際、見つかったのがあの宝の地図が入っていた金庫である。
それは蔵の隅に隠されるように置かれていて、丘山は幼い頃に一度だけいたずらで開けようとしたところを、先先代の祖父に見つかり怒られた記憶がある。
滅多に怒ることのない祖父が、あの時ばかりはとても怖かったため、当時は開けることができなかったが、成長し社長となった今、その金庫の中身を知らずにはいられない。
しかし、どこを探しても鍵のようなものは見つからず、ダイヤル式になっているがどう開けたらいいかもわからない。
そんな時、秘書の逢坂からある提案を持ちかけられた。
「開かずの金庫といえば、この前見たテレビ番組でやってましたよ?」
「ああ、それなら僕も何度か見たことが……」
丘山が見たときは金庫の中からは大したものは出てこなかった。
その代わり、金庫のあった蔵の中からは掛け軸とか昔の食器なんかが出てきたな……と、思い出す。
「我が社は歴史がありますし、いい宣伝になるかもしれません。確か番組で他にも開かずの金庫がないか募集していたので、応募してみますか?」
「そうだね、応募してみようか。普通に業者に頼むより話題になるかも」
他の社員たちも、番組に取り上げられることが決まると乗り気だった。
そこまで都会ではないし、芸能人と会えるなんて滅多にないような田舎なのだ。
いったいどんな感じなのかと、期待していた。
そして、約半年前、金庫から見つかったのはあの宝の地図。
これは番組史上初ということで、特番でその宝の地図の示す場所を探すことが決まる。
より高い宣伝効果が期待されていて、丘山自身もその宝探しに参加するつもりだった。
だが、その五日前に階段から足を滑らせて左足を骨折。
仕方がなく、社長室から撮影の様子をリモートで見守ることになる。
まさかそれが、決して探してはいけない宝の地図だったなんて知らずに————
半年の間に現場にいた多くのスタッフが亡くなり、確かに見つかった箱は呪いの箱だったのかもしれない。
だが、丘山にとっては地図の方が呪いの地図であった。
あの地図を見つけてからこの半年の間、丘山の周りではおかしなことが相次いで起こっていたのだから————
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