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◾️ ◾️ ◾️
「八年前にも?」
『ええ、先生が言っていた通り、他にもあの小学校で亡くなった生徒がいないか調べていたんですが————』
あの古いうさぎ小屋にいた三人の少女の霊の内、一人だけ誰だかわかっていなかった少女。
友野は、きっと彼女もあの小学校で亡くなっていると思った。
そこで、南川刑事に過去の事件を調べて欲しいと頼んでいたのだが、その結果、一人の人物が浮かびあがったと電話が来たのは、木下の家から帰ってすぐのこと。
『八年前、あの小学校の屋上から落下した児童がいて……落ちた場所がうさぎ小屋の前だったんです』
南川の見つけた事件の記録によると、八年前の早朝、警備員が出勤して来た教師と入れ替わりに校舎を出て帰宅しようとした時、児童の叫び声が聞こえて来た。
何事かと思った警備員が声の聞こえた方へ駆け寄ると、朝練の為に早く登校して来ていた吹奏楽部の子供達だった。
うさぎ小屋の前に人が倒れているのを見つけたのだ。
それが、当時六年生だった
長谷川彩乃は発見時、まだ息があったらしく、救急搬送されたのだが、搬送先の病院で息を引き取った。
『それが妙な事件でして、うさぎ小屋の中に倒れていたっていう証言もあったそうなんです。前じゃなくて、中だったって————それに、深夜から早朝の間の出来事ですし、小学生がどうしてそんな時間に校内にいたのかもわかっていません。それと、長谷川彩乃ちゃんの耳なんですが…………片方見つかっていないんですよ』
彩乃の耳は、噛みちぎられていた。
当時、学校のあたりに野良犬がいるのを目撃されていたこともあり耳がなくなっているのは、野良犬の仕業ではないか……ということになっている。
『うさぎに食われたんじゃないか……なんて、言っていた児童もいたそうですが————結局は屋上に靴と飛び降りた痕跡が残っていたので、足を滑らせたんだろうってことになってますけど……』
「なるほど……」
友野は、南川からタブレット端末に送られて来た顔写真を見ると、あのもう一人の霊の顔と一致する。
「南川刑事……もう一つ、頼みたいんですけど————」
『なんですか?』
「木下美咲ちゃんが失踪した当時の教職員と生徒名簿が欲しいんです。それと、この長谷川彩乃ちゃんの事故当時のものも————」
* * *
一方、渚は梓のスケッチブックを持って自宅に行き、自分の部屋のクローゼットの奥にしまいこんでいた段ボールを取り出す。
うさぎのシールが貼られている、B6サイズの小さなノートを取り出した。
「やっぱり……ここにあった」
ノートと一緒にしまってあった小学校の卒業アルバムも持って、渚は占いの館へ足早に向かう。
今すぐ確認しなければ気が済まない。
友野が見た三人の少女の霊。
その内のまだ誰なのかわかっていない一人が、誰だかわかるのは自分しかいない。
それに本当にあの子がもう一人の被害者であるなら、犯人の検討もついている。
梓の描いた絵を見たおかげで、渚はこの話を友野にしようと思った。
次に狙われるのは、おそらく詩愛だということもわかっている。
結愛の母親によると、あのうさぎのシールを詩愛も持っているらしいのだ。
学年の途中で他の学校へ行った為、卒業アルバムに教員として名前は載っていないが、写真には写っている。
学校では一番綺麗な先生だった。
名前は忘れてしまっていたが、あの時の痛みは覚えている。
そして、あの子の写真もアルバムにはクラスの一員として載っている。
「先生!」
占いの館に着くなり、渚は友野の前で卒業アルバムを開き、一人の児童の写真を指差して言った。
「もう一人の被害者の霊は、この長谷川さんじゃないですか?」
それは、一人だけ五年生の時の写真を切り取られて紹介されている渚のかつてのクラスメイト————長谷川彩乃の写真だった。
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