第三章 夜の学校
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校内キャンプの後、席替えがありました。
くじ引きで決まったんですが、私は一つ隣に移動しただけで、つまらないなと残念に思っていました。
そこは長谷川さんの座っていた席で、今は誰もいなかったのでみんなはランドセルの中に自分の教科書やノートを詰めて移動していたけど、私は隣なのでそのまま移動するだけです。
それは他の子に比べたら楽だったんですが、机の奥に、何か入っていたんです。
長谷川さんのものだったら、お
普通のノートの半分くらいの小さなノートでした。
ノートの表紙には、うさぎのシールが貼ってあって、これはあの私を叩いた先生がお気に入りの子に渡していたシールです。
私はもらえなかったけど、同じクラスにいる先生のお気に入りの女子がもらっていたのを見たことがありました。
あの先生はこの学校では一番美人な先生で、優しい先生だったけど、私は気づいていました。
差別をする先生だってこと。
だって、なんでも女子が優先で、前に女子と男子がケンカしていた時も、女子の味方をしたんです。
いつもそうです。
どちらかが悪いわけでもなかった問題も、いつの間にか男子が悪かったことにされていました。
それに、女子の中にもお気に入りとそうじゃないのがあって、私はそのお気に入りじゃなかったのですが、このシールがあるということは、長谷川さんは先生のお気に入りだったんですね。
私はノートを開いてみました。
長谷川さんの丸い可愛らしい文字で書かれていたのは、うさぎ小屋で飼っている三羽のうさぎの成長記録みたいなものでした。
シロマルが元気がないとか、三日前よりやせた気がするから、餌の量を増やしたほうがいいかな……とか、かわいいイラストつきです。
漫画みたいなのもあって、面白かったです。
その中に、『大きなウサギさん』というキャラクターがいました。
うさぎの着ぐるみだけど、口だけは人間みたいなんです。
不思議だなぁと思っていました。
少し不気味だけど、どこか面白かったので、これは一度家に持って帰って、全部読んだら長谷川さんの家に持って行こうと思いました。
でも、私うっかりしていて、その日は持って帰るのを忘れちゃったんです。
漫画の続きが気になって、もう外は暗かったんで、親の車で送ってもらって学校に戻りました。
ちゃんと警備のおじさんに忘れ物をしたことを説明して、中に入れてもらいました。
廊下も教室も真っ暗だったけど、月明かりが差し込んでいたので、怖いなんてことはありませんでした。
私は、ノートを持って廊下を歩いていました。
「え……?」
そして、一階にある大きな鏡の前を通った時、鏡に映ったのを私は見たんです。
窓の外に、長谷川さんの漫画に出てきた『大きなウサギ』のようなものが、うさぎ小屋の方へ歩いていくのを。
私は振り返ろうとしました。
でも、そこに警備のおじさんが来て……
「忘れ物は見つかったのかい?」
「は、はい」
「それは良かった。それじゃぁもう帰りなさい。この鏡はほら、確か変な怪談話があっただろう? お化けが出るかもしれないぞ?」
おじさんは冗談で言っているようで、笑っていました。
私はそれよりあの大きなウサギがどうしているのか、気になって仕方がありませんでした。
そもそも、あれはなんだったのか……わからないまま私はおじさんに連れられて外に出ました。
出口で待っていた親の車に乗りましたが、うさぎ小屋が見える道も通らなかったので、結局確かめることができません。
私の見間違いだったかもしれないし、もしかしたら、また人とそうではないものを見間違えたのかも……
そう思いながら家に帰りました。
その次の日だそうです。
うさぎ小屋の三羽のうさぎが死体で見つかったのは……
なんでも、鍵を閉め忘れていたんですって。
怖いですね。
私、犬って、うさぎを食べるんだって知って驚いたんです。
うちで飼っていたマロンは、お気に入りのドックフードしか食べない子だったんで————
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