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うさぎ小屋の地面には、牧草が厚く敷き詰められていたが、校長がいう通り、そこで人が死んでいたことを物語るように、血痕が人の形をして残っている。
「発見した児童の話だと、桃原梓ちゃんの遺体の上に、牧草がかかっていたそうです。ここにあることを隠していたようですが……人喰い兎のお供え物としておいてある餌を取り替えに来たときに、変な匂いがしたのと、牧草の隙間から目が見えたようで」
発見した児童は、ショックを受けて学校には来ていない。
「その子、何年生?」
「四年生の男の子です」
牧草を避けると、耳や二の腕、太ももなど数カ所に噛みちぎられたように体の一部が欠損した状態の遺体が出て来たのだ。
身につけていた衣服も破られていた。
「死体を発見するなんて、大人だってショックを受けるのに……」
友野は目撃した児童のことを思い、顔をしかめる。
「噛まれた跡から、犯人が人間であることはわかってるんですけどね、DNAが一致するかどうかは犯人のDNAを採取しないとわかりませんし……なかなか事件は難航しているそうですよ? それに……」
「それに?」
「うさぎのDNAも採取されているので、本当に人喰い兎がいるんじゃないかって、
なぜ渚がこんなに詳しいのかと思えば、また南川刑事をそそのかして聞いて来たようだ。
今頃、
友野には容易に想像できた。
「————……それで、何か見えます? 先生」
渚はDNAなんて科学的なものではなく、友野の非科学的なものの方が興味がある。
入ってすぐに、うさぎ小屋の隅を何度も気にしている友野の様子を見逃さなかった。
「……うん、見えるけど、うさぎじゃはないよ」
「え、そうなんですか? じゃぁ、何が……?」
「女の子が三人いる——……」
一人目は、今回被害にあった梓だ。
結愛に見せてもらった写真の顔と一致する。
だが、残りの二人は一体誰なのかわからない。
「女の子って、何歳くらいのですか?」
見えないとわかっていながら、渚は友野が見ている場所と同じところを見る。
「梓ちゃんと同じくらいだね……一人は、長い髪に赤いリボン、黄色のワンピースを着てる。もう一人は、髪は三つ編で……眼鏡をかけていて、白いブラウスに青いスカートをはいてる」
渚は、視線を友野にバッと戻した。
「この子たち、犯人の顔を見ていない。だから、わかってないんだ……誰に殺されたのか————それで、ここに残ってる」
そう言った友野の横顔は、とても悲しそうだった。
一体誰に傷つけられ、命を落としてしまったのか、彼女たちはわからずにずっとここにいる。
成仏できずにいるのだ。
「————……それじゃぁ、被害者は他にもいる……って、ことですか?」
「うん。それと……どっちの子だろう……? あ、黄色のワンピースの子の方……か」
友野はうさぎ小屋の地面を指差した。
「この下に、埋まってるよ。あの子の死体が……」
「え……?」
「見つけて欲しい……って、言ってる」
翌日の日曜日、許可を得てうさぎ小屋に敷かれた牧草を退けて地面を掘り返すと、友野のいう通り白骨死体が見つかる。
警察の調査の結果、十五年前に行方不明になったこの学校の児童であることが判明した。
その児童の骨と一緒に、数羽のうさぎの骨も見つかっている。
しかし、もう一人いる女の子の手がかりは何も残っておらず、一体誰の霊なのかはわからなかった————
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