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友野と渚は、三好の待つ小学校の職員玄関前にパトカーが停められていることに気がついた。
ちょうど学校帰りだった数人の小学生たちが、まじまじと本物のパトカーを興奮気味に見つめていて、何かの事件があったのだろうかと渚は首をかしげる。
「あれ……? 先生、あの車————」
その前に停まっていた見覚えのある黒いセダンを指差して、渚はあることに気がついた。
「
「あ、本当だ……ってことは、捜査一課が動くような事件ってことか……?」
東警部補は、捜査一課の刑事である。
捜査一課といえば、主に殺人や強盗なのどの凶悪犯罪を担当している部署だ。
そんな数々の事件の中には、人がやったとは思えないような不可解な事件がある。
悪霊が引き起こした殺人や、呪いによって人が死ぬことだってあるのだ。
そういう類のものを、普通の刑事たちは信じない。
しかし、東とその相棒の南川は友野と何度か関わりを持っているためにそういう類のものをある程度信用している珍しい人だ。
特に東は強面なくせに、友野の目を信用している。
「何の事件でしょうか? 殺人とか?」
「いや、わからないけど……小学校で殺人事件って——全国ニュースになってるんじゃないか? そんなことが起きたら……」
本来、三好との約束はもう少し遅い時間だった。
だが、十四時からの占いの仕事が急遽キャンセルになったため、少し早めに来たのだが……まさかパトカーに遭遇するとは思ってもいなかった友野。
ここへ来る前に見たニュース番組でも、そんな話は出ていなかった。
「事件直後なら、まだ出てないかもしれないじゃないですか! 大スクープかも!」
「いやいや、俺たち本当の記者じゃないんだから……」
友野がインターフォンを鳴らそうとしたその時、校舎の方から女性の叫び声のが聞こえてくる。
「私じゃないんです!! 私じゃないんです!!」
ドアが開き、玄関から出て来たのは二人の刑事に泣きながら連行されて行く三好————
「み、三好さん!?」
三好は渚、そしてその隣にいた友野に気がついて、必死に助けを求めた。
「お二人とも、来てくれたんですね!! 私じゃないんです!!」
「なんだ……お前たち、なんでこんなところに……」
東と南川は驚いて立ち止まる。
「東警部補……一体これはどういうことです? 何かあったんですか?」
「——……すまないが、今回はお前たちには関係ないことだ。幽霊も妖怪も関わってないからな」
「そうです。渚ちゃん、僕たちは僕たちの仕事をしているだけだから——」
三好に起きたドッペルゲンガーの話を聞いていない東と南川は、この事件はただの殺人未遂であって、友野の力は必要ないと思っていた。
だが、三好が訴える。
「私のドッペルゲンガーが、人を……人を殺そうとしていたみたいなんです!! 早くどうにかしてください!! 友野先生!! 渚さん!!」
「どどどドッペルゲンガー!?」
南川はドッペルゲンガーと聞いてかなり驚いていたが、騒ぎを聞きつけた近所の人や子供達が集まって来ていることに東が気づいて、眉間にしわを寄せる。
「…………とにかく、ここで騒いでも野次馬が集まって来ちまう。詳しい話は署で聞く。いいか、まだ逮捕じゃない。これは任意だ。まずは話を聞かないことには、先に進めないだろ」
「そ、そんな……!! だって、私は何もしていないんですよ!?」
三好は泣きながら抵抗しようとしたが、友野がなだめて何とか車に乗せる。
「大丈夫です、この刑事さんたち、顔は怖いですけど信用できますから————俺たちもあとで向かいますので、とりあえずこれを」
「な……なんですか? これ……折り紙?」
友野はスラックスのポケットから奴さんを取り出して、三好に渡して言った。
「仮の守護霊です。お守りだと思って、事件が解決するまでは肌身離さず持っていてください」
友野が用意していたのは、守護霊がいない三好の為に用意した式神。
三好はこれが何か全く分からなかったが、祈るように両手でぎゅっとそれを握りしめた。
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