夢みる機械

ルート

第1話

 彼らは僕にいつも話す。


 夢は空に浮かぶ綿雲のようにふわふわとしていて、現実味がなくて、どうしようもなく残酷でいて、心地が良いと。


 自意識とその場の空気がまるでミルクを入れたコーヒーのように混ざって、まどろんで、その感じが心地いいんだと彼らは言った。


 僕は他のお医者様達と患者様の方針を決めたのち、作業に移る。


 その患者様をベットに寝かしつけると僕は患者様の頭に装置を取り付ける。


 複雑な装置は、彼らの望むものを的確に与える。


 すると彼らは眼が蕩けていく。


 その眼はまるで届かないものに手が届きそう。けれど届かないような、そんな心地良さそうな眼だ。


「失った過去を取り戻せる」


 きっとその感覚とまどろみが心地よいのだろう。


 僕はただ、彼らに愛を注いでいるだけだ。その愛が彼らを治してくれるなら僕は喜んで脳に指示を送るだろう。


 彼らは届かなかったものに手が届いた瞬間、眼の焦点が合う。


 そして彼らは夢以外の何かを見る。


 その眼はとても悲しそうで、何色にも染まらない事実を認めきれない感じがした。


 だから僕にすがるのだろう。


 それは設定としてあるだけなのかもしれない。だけど、僕は彼らを愛している。


 いつか、彼らが救われることを願って僕は愛を注ぐ。


 僕は、僕の創造主が目覚めることを。


 彼らが救われないことを直視できることを。


 僕が眠れることを。


 今もずっと_______

 
































              夢みている。

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