エピソード9:三次元印刷機

 優良とセツが地形探索している間に家で留守番をしている沙夜はとある発見をしていた。

「ようやく倉庫の片付けに取り掛かれるよ~」

「二人が帰ってくる前にやっておかなきゃ」

 彼女は綺麗になった食器を片付けると倉庫の方へ向かっていく。

 倉庫の中はあの時のままで段ボールが散らかっている。

「どこから手をつけようかな?」

 とりあえず、手前の段ボールから中身を確認して片付けていくことにした。

 その段ボールは肩幅より少し大きめのサイズで想像よりも大きめであった。

「一体何が入っているんだろう?」

 中を開けてみるとそこには20cmほどの機械が入っていた。

「BigPyooon3DPだぁ~」

「みんなが帰ってくる前に使える状態にして驚かそうかな?」

「交換用のパーツとかは違う段ボール?」

 沙夜がワクワクしながらプリンターのディスプレイを拭いて、他の段ボールを開けて。

 横の段ボールには大量のフィラメント(3Dプリンターで出力するための素材)が入っていた。

 しばらくして、機械の電源ユニットからファンの音を立てながら、起動した。

「お、ちゃんと使えるようになってる!」

 さっそく、3Dプリンターに白色のフィラメントをセットしてテストデータでプリントしてみた。

「microSDカードがプリンターに入っていて良かった~」

「パソコンもネットもないからお試し用のSTLデータがないと何もできなかったからね~」

 するとその機械から空気が熱せられ、ゆっくりとノズルが動き出す。

 不思議なメロディーを奏でると、土台には白いスティックのりを塗った跡のような細い線が描かれていた。

「保存状態が良くないせいか空気が入っちゃっているかな?」

「もう少し稼働させて、このまま上手くいくのか様子を見よう」

 3Dプリンターを部屋の隅に移動し、残った段ボールを片付けていく。

 せわしなく動くプリンターの音と合わせるように沙夜も荷物の整理をしていく。

 分からない人のためにセツから3Dプリンターについて解説してもらおう。

『おいおい、それはルール違反じゃないか?』

『こっちからの呼びかけには無反応ですか…』

『しょうがない、素直に指示に従うか』

 3Dプリンターっていうのは立体的な物を作るための印刷機のこと。

 立体的に作れる反面、印刷に時間がかかってしまうのが難点。

 印刷スピードはプリンターの性能やフィラメントの種類、ソフトウェアの設定などによって多少時間を早めることができる。

 しかし、時間がかかる場合が多いためほとんどのユーザーは沙夜みたいにプリントしている間に他の作業をしていることが多い。

 印刷の方法が非常に原始的で薄い層を何層も重ねていくことで立体的なものにしていく。

 さっき登場したプリンターはFDM方式と呼ばれる下から積み上げていく方法。

 SF作品みたいに何もない所から一瞬で出てきてくれると嬉しいが、物理的な制限を受けてしまう世界でそれを実現するのは非常に困難。

 今は扱いにくいものだが、いつかは誰もが持っているものであると信じたい。

 ほかにもいろんな印刷方法とかフィラメントの種類があるから気になった人は調べて欲しい。

 そろそろ、僕の解説はここまで。

 優良が僕を呼んでいる。

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無人島しか勝たん! 光城志喜 @koojyoo

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