エピソード8:調査
セツと優良は島の調査のため先ずは島の周りを歩いてみることにした。
「まずは島の全体を把握する所からね!」
彼女は楽しそうに浜辺に沿って歩いているが、彼はめんどくさそうについて来てくる。
『あの~、外周歩いて行こうとするのは……』
「大丈夫、この島案外小さいからすぐ一周できるはず」
5分後。
「山になっていて通れないんだけど……」
『そうだよ』
彼は知っているかのような口ぶりであった。
「反対回りなら行ける?」
彼女はセツの目を見て問いかけるが彼は横に首を振って返す。
『家の裏にある抜け道が唯一歩いて行けるルートだよ』
「セツに島の案内してもらった方がはやそう?」
この島の住人であったセツなら知っているのではないかと思った。
『だが残念ながらいつも使っている道以外はあまり詳しくないんだな』
『だから、あんまり僕をあてにして欲しくない』
「それでも、私よりかは知ってるでしょ?」
『多少はな』
二人は家の横を過ぎて来た時に通った抜け道をくぐって出た。
今朝来た道を途中まで戻ると彼は左の方向を耳で指しながら言った。
『ちなみに、この先に柚の木が生えているぞ』
彼が指さした所には他の木とは違った柚特有の細くて高くない木があった。
「ぱっと見、あんまり実になってみたいだけど?」
『このあたりはあまり日光が当たらないせいか成長が遅いみたいなんだよな』
彼女はセツの言ったことを頷きながら手元の手帳に書き込んでいった。
『ここの柚を場所を前に進むとびわがなっている場所があって、さらに先に行くと海岸に出る』
『右に曲がると昨日野宿をした場所に着くけど、どっち行きたい?』
「せっかくだし昨日とは違う道を通って行ってみたいな」
そう言って彼は柚の実がなっているところまで跳んで行った。
進むにつれて確かにだんだん実が増えてきた。
「意外とたくさんあるね」
彼女は潮風で果物はあまり生えてこないものであると思ったが、どうやら関係ないらしい。
『もうちょいで波辺つくよ~』
徐々に木漏れ日の光が増えていった。
向かい風が強くなっていくと、ある場所で木がなくな土から砂に変わり始めた。
そして、目の前にはあたり一面海が広がっていた。
左側には山が見え、麓には岩場があった。
右側はずっと浜辺が続いているようだった。
「やっぱり私に山は似合わないね」
彼女は大きく両腕を広げて深呼吸をする。
『なら、今日は海岸沿いに探索するか?』
彼が相手のことを気遣うのは意外だったため少し返事が遅れた。
「たしかに、だいたいの島の全体像を把握してからの方がいいね」
彼はピクピクと嬉しそうに耳をパタつかせ、こっちをじっと見つめてくる。
しかし、すぐに視線をそらし足早に跳んでいった。
『はやくしないと置いて行っちゃうぞ~』
「ちょっと、岩場の方も見たいんだけど~!」
そう言って、優良はセツを追いかけて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます