エピソード4:再会

 ウサギの道案によって、キャンプ地候補の所までスムーズに戻ることができた。

 彼女はふと気になったことがあった。

「そういえば助けてくれた時、なんで私の場所知っていたの?」

『そりゃ、頼まれたからだよ』

 ウサギは周りをキョロキョロしながら、そう答えた。

「誰に? 私以外に誰か人が?」

 すると、薄暗い木の裏陰から声がした。

「私だよ」

 自分と同じような髪の色にショートヘアのその少女は私の妹、沙夜さやであった。

「嘘でしょ?!」

 衝撃的の光景に優良ゆらはしばらく言葉がでなかった。

「嘘じゃないよ~、幽霊だと思った? へへ」

 本人を目の前にして聞く声は心にしみた。

 もう、この世に存在していないと思っていた。

 二度と会えないと思っていた。

 こんなにも会えたことに感謝したことは今までなかった。

「本当にホントーに生きてる?」

 分かっているのに何度も聞いた。

「そんなに信じられないなら触ってみてよ」

 沙夜さやは私の目の前に来て、手ひらを差し伸ばした。

 私は手のひらを握った。

 その手のひらは自分より僅かに冷たかったが、たしかに人の温かさがあった。

 そして、その手の大きさや手触りは沙夜さやであった。

 ここで私は彼女が生きていると実感できた。

「本当に生きてる!」

 私は彼女との再会に感動し、目から涙を流しながら抱きしめた。

「うー ちょっと、強すぎかも~」

 抱きしめられて恥ずかしそうながらも久しぶりに会えて嬉しそうであった。

「あっ、そういえば…」

 優良ゆらは首にかけていたペンダントの片方を差し出した。

 浜辺に落ちていた沙夜さやの分のペンダントである。

「もう見つからないと思ってた…」

「ありがとう、ねえちゃん。見つけてくれて!」

 優良ゆら沙夜さやのペンダントを彼女の首にかけ、言った。

「私、やっぱり沙夜さやがいないと何もできないんだなって改めて気づいたの」

「だから―」

 沙夜さやはすぐに言った。

「それはこっちもそうだったよ。 だから、あまり自分を責めないで」

「二人で一番星なんだから!」

 姉妹の強い絆が目の前に広がっていた。

 そんな感動的の再会の最中にウサギが無神経に語りかける。

『暗いからせめて、火起こそうよ』

「「そうだね」」

 二人同時に返事をした。

沙夜さやもウサギの声が聞こえるの?」

「このウサギさんとは昨日会っているの。」

 沙夜さやもウサギに会っていたことに驚いた。

 話したいことがたくさんあるが、周りはすでに薄暗くなっており日が沈みかけていた。

「ウサギさんも待っているし、先に焚き火に火をつけてから話そうか」

「私、ライター持ってきたから。 枝木とか石を集めよう。」

 沙夜さやがそう言うと二人は枝木や石を集め、ウサギは枯葉を少しずつ集めた。

 焚き火に火をつけると周りを囲むようにしてそれぞれ座った。

 しばらく沈黙が続いた。

 いろいろ聞きたいことがたくさんあるのに、いざという時に言葉が出ない。

『お腹空いたから、ポケットの中にあるリンゴ一つ欲しい』

 ウサギはいつものように話しかけた。

 すると、優良ゆら沙夜さやの両方からリンゴが出てきた。

「二つもリンゴくれるの? 嬉しいね」

「よくその小さなお腹に二つも入るね」

 優良ゆら傲慢ごうまんなウサギにそう言った。

『いや、リンゴの皮だけね。』

 ウサギは語弊がないようにすぐに言い直した。

 リンゴの皮を食べている間、二人は剝いたリンゴを食べることにした。

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