第3話
3
「ええっと後は....、ヘアドライヤーだけかな....」
独り言を言って、書き出したメモを見ながら、モール内の家電コーナーに向かう。
ショッピングモールに来た3人だが、最初に必需品を購入してから、他をゆっくり見たいという事で、宇来は、恵 未来と別れて、先にそちらの方へ急いで行った。
連絡先は今朝交換しておいたので、安心して再度落ち合える。
日用的な必需品などを購入した後、家電コーナーで、最後にヘアドライヤーを購入後、未来に連絡し、モール内のフードコートで待ち合わせする事にした。
フードコートに着くと、すでに11時半を過ぎていて、恵と未来は、すでに座って待っていてくれた。
「あれ、意外と買い物少ないのね」
宇来の買い物袋を見て、恵が言った。
「はい、大きいものは無く、あとは身の周りの必需品だけなので、コレで終了です」
「じゃあ、みんなお昼にしようよ」
「そうね。未来なんか待ちくたびれて、倒れそうだったのよ」
「そうなんですか? ごめんね未来ちゃん」
「もう おかあさ~んってば...」
「うふふ」
「私も歩き疲れて、お腹が空きました」
「実は私もなのよ、宇来ちゃん、うふ」
「...で、私たちは 海鮮丼にしたの、宇来ちゃんは?」
「あ、それ美味しそうですね、私もそれにしたい」
「じゃあ同じもの3つね、お母さんわたし注文してくるから」
「お願いね 未来」
「は~い」
未来が注文している間、恵と二人きりになった時、恵から宇来に質問が来た。
「宇来ちゃん、あのね...」
「はい、なんですか?」
改まった恵の言い方に、宇来が少し気を張る。
「コレから毎日一人でやって行くのよね、宇来ちゃんは」
「はい、基本そうなります」
「大学の時からやってるの? 自活」
「いえ、実はわたし、高校は隣の市なので、そこでの女子寮からすると、5年の一人暮らしです」
「まあ、そうなの....。最初は寂しかったでしょう?」
「はい。ですが....、以外に寮内の同級生も多かったので、じきに生活には慣れてしまいました」
「そうなの。....で、宇来ちゃん、地元はどこなの?」
「愛知県です」
宇来は愛知県の海が近い市で生まれ育った。
「あ~、だから三河湾の海苔なのね、あそこの海苔美味しいから」
「ありがとうございます」
「....で、ここから本題よ」
と、その時に未来が海鮮丼をトレイに乗せて、持って来た。
「お待たせ~、美味しい美味しい海鮮丼ですよ~」
「あら丁度来たわ、食べながら話しましょうね」
宇来と未来が、丼とお茶の入った湯飲みを配る。
「はいお母さん、お箸」
「ありがとうね、未来」
「じゃあ食べましょうか」
「「「いただきます」」」
すし飯が見えなく、器からはみ出している具材に、宇来は驚いた。
「コレ、凄くないですか? めっちゃ大盛りみたいです」
「これでも普通盛りなのよ~ 宇来ちゃん」
「だから、周り見て? この辺凄いでしょ、同じ丼が」
周りを見ると、約50~60人は居るフードコートに、約半分は、同じ丼だった。
「早く来ないと、席無くなっちゃうからね、で、12時前でもご飯にしたのよ」
「あ~なるほど」
しかし、食べてもなかなか減っていかない器の中身に、少しばかり苦闘する事になった。
丼半ばに入ったところっで、ふたたび恵から話しかけられた。
「それでね、宇来ちゃん、さっきの話の続きなんだけど」
それに、未来が割って入る。
「お母さん、それ、昨日の話かな?」
「そうなの、それを今から宇来ちゃんと相談するの、それに、女同士3人だし、ちょうどいいから」
「えっと、どの様な事でしょうか?」
少し心配なのか、宇来の箸が止まる。 それを見て、恵が宥める様に言う。
「宇来ちゃん、コレから一人暮らしになる訳なんだけど、私は何かあなたの事が心配なの。 コレから、社会に出て、多分定時なんて毎日ある訳じゃあないでしょ? 朝樹と同じ会社だから分かるけど、事務と言っても、月末になると必ず残業になるって聞いたわ」
「そうなんですか....」
「だからね、夕飯だけでも毎日ウチに来て欲しいのよね、お母さん」
「そうなの、どう?宇来ちゃん」
少し考える宇来。 だが、この気遣いに、昨日の事と合わせて、自然と目に涙が湧いてくる。
「あらら、泣く事じゃあ無いと思うけれど...、どうしよう 未来」
「あれ~、宇来ちゃん、もしかして嬉しいの?」
宇来がコクコクと頷き、そして少し間を置いてから。
「はい...、昨日からのおばさまたちのご厚意がとっても嬉しくって、嬉しくって、急に涙が出てきました........、ぐす....」
「あらあら、メイク落ちちゃうから、涙拭きなさい」
メガネを取って、涙を拭く時に、恵と未来が宇来の素顔を見た。そして、驚いた。
「あれ~! 宇来ちゃん、すっごい美人だったんだ~、ね、お母さん、見て」
「あらあら、メガネで隠して勿体ないわ、宇来ちゃん。 とっても美人だったのね」
「コレは、一人暮らしでは危ないと思う、ね、おかあさん」
「本当に、この容姿での一人暮らしは危ないわね。とても放っておけないわ」
「お母さん、コレは 家族会議は決定よね」
その流れを聞いた宇来は、これ以上の恩恵を受ける訳にはいかないと、恵と未来の意見に躊躇してしまった。
「ちょっと待ってください。 昨日から散々お世話になっているのに、そのさらに上乗せみたいになってしまっては、申し訳無いです。だから....」
宇来の言葉を聞いて、ちょっと先走り過ぎたと、反省する母娘。
「でも、私は心配だわ~、宇来ちゃん」
そう言うと、全員ご飯を食べ終わった。
恵がお茶を飲みながら、考えている。
そして、放った次の一言に、宇来は驚き、茫然とする。
「宇来ちゃん、あなたウチに来ない?」
「!!!」
コレには宇来がビックリである。
「部屋だって空いてるし、ウチは女の子みたいなのも一匹居るし、危ない男子は、私が撃退できるから、どう?」
(おかあさぁ~ん、わたし人間なんですけど(未来))
「....え~っと....。 どうって言われても、今すぐには返事が....、って、とにかく、これ以上お世話になる訳には....」
(....って、おばさま、危ない男子は、昨日見た限りでは、居なかったですよ(宇来))
「でも私はあなたの事が、どうしても心配だから、ぜひ考えて欲しいな」
「その気持ちだけでも、私は嬉しいです」
「でも、宇来ちゃん、今日の晩御飯は、絶対にウチに来てね、家族会議があるから」
「か...」
言葉に詰まる宇来だった。
「じゃあもう決定だから、ご飯も済んだし、再戦に行きましょうか」
「決定なんですね、おばさま」
「心配だから、いいのよ...ね」
恵から笑顔で言われ、ただいう通りにするしか無かった宇来。
「はいは~い! 次行きますよ~」
未来の号令で、3人が立ち上がり、トレイを返して、そのまま再び売り場に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます