貴方の分まで生きるから

 今朝テレビで一人の少女が電車に飛び込んだとゆうニュースを見た、その少女は親の会社が倒産してから地獄のような日々を送り重度の精神病にかかっていたとゆう、こんなニュースを見ていると自分の悩みがっちぽけに見えて余計に自分がみっともなく思えてまた切った、こうして私の腕は傷だらけになっていた。



 深夜零時、規則正しく並んだ町の街頭、遠くを走る終電の音、私はこの世界に溶け込む様に長い坂を上がった手すりで佇んでいた、この時間は誰もいない誰も私を見ないだから私は私でいられるこんな時間が好きだ。


「こんにちは?」


「うわぁ!!」


 誰も居ないと思っていたから出したこともない様な声が出た。


「え......だれ?」


「ん? け・い・さ・つ!」


「え! やば!」


 警察! 咄嗟に驚いたがよく見たら警察な訳がない。


「うそうそ冗談だよ!」


「はぁ~」


「それで貴方こんな時間に何やってるの?」


「それはお互い様じゃ......」


 この人こんな時間に何故いるのか?もしかして危ない人?でも何故だろう?初めて会った気がしない、なんなのだろうかこの安心感は。


「ん? 私はいいもんもう二十歳だし、それにただの散歩だから」


 なんだ同じか。


「私も散歩です」


 話す感じ明るくて悪い人ではなさそうだ。


「そっか! 同じか! この時間の散歩気持ちいいよね~よく散歩するの?」


「この時間は人がいなくていい心地がいいので良く散歩してます」


「だよね、昼間は人がいっぱいで窮屈なんだよね~」


「貴方も良く散歩に来るんですか?」


「私は久しぶり、ほら今日お盆でしょ? 実家に帰ってきたからつい浸りたくなって」


「へ~普段はどこに住んでるんですか?」


「う~ん言ってもわかんないよ」


「そ~ですか~」


 何か隠したいことでもあるのかな?


「ねぇ! ちょっと一生に歩かない? まだいろいろ見たいとこあるんだ!」


「わかりました......?」


 彼女は不意に私の手を取った、私は反射的に彼女の手を振り払ってしまった。


「え! あ、ごめんなさい手嫌だった?」


「いえ、つい......ごめんなさい」


「うん、ごめんね、行こっか」


 見られたくなかった私の手は自分でつけた傷でボロボロだから、それから彼女が最初に足を止めたのは昔今の家に引っ越す前よく行った公園だった。


「わぁ~懐かしい~この滑り台まだあるんだね〜」


 彼女はまるで子供かの様に私が生まれる前からあった滑り台に飛びついた。


「それ錆びてるから気おつけた方が......」


「イタ!」


 遅かった。


「錆が刺さった~~!」


 彼女は半泣きで私に抱きついてきた。


「え! あ、だから言ったのに......」


「傷跡舐めて?」


な、舐める!!突然のことに動揺した


「いや、です」


「え~お願い~~!」


彼女はまるで子犬のような顔で私にねだった


「しょうがないな......」


ペロ私は柄にもないことをした普段なら絶対しないことを何故か彼女だけにはした。


「うん! ありがとう!」


 彼女の満面の笑顔を見ていると自分も自然と笑顔になった気がした。


「さぁ! 次行こ!」


 そうして彼女が次に向かったのは子供の頃よく通っていたファミレスだった。


「ファミレス?」


「お腹すいたでしょ?」


「いや、別に」


グゥ~~


「さぁ! 入ろ」


 中に入るとやはり深夜なだけあって客は私達だけだった。


「お客さま一名様ですね、こちらの席どうぞ」


「いや、二名です」


「え? あ! 大変申し訳ございません二名様こちらの席どうぞ」


 おかしな定員だったな夜だから眠たいのかもしれない、申し訳ないな。


「ねぇ! 何食べる?」


 私はいつも決まっていた。


「ドリア」


「ふふそうだよね~それじゃ私は~パスタかな」


 そうしてあっとゆうまに私達の前に注文した品が並んだ。


「わぁ~美味しそ~食べよ食べよ!」


「「いただきます」」


「う~ん美味しい〜」


 彼女がとても幸せそうに食べるのを見ていると食べ慣れたこの味もより美味しく感じた。


「はぁ~食べた食べた」


「ねぇ? なんでここにきたの?」


「昔一度だけ家族できたことがあってね?それがすっごく大切な思い出なの!」


 大切な思い出か私にはないように感じて羨ましかった。


「最後はここだよ」


 ん? 最後? ......その場所について私の頭は空っぽになった


「なんでここ?」


 そこは私が昔住んでいたマンションの跡地だった。


「自己紹介するね!私宮部美咲」


 彼女は私に背を向けてそう言った。


「み..や..べ..み..さ..き..?」


「会いに来たよ幸!」


 振り返った彼女の瞳庭涙が溜まっていた、私の頭は混乱しすぎてパンクしていた。


「お姉ちゃん......なの?」


「そうだよ! お姉ちゃんだよ! ごめんね? ずっと一人にして」


 私は言葉が出せなかった。


「幸! 私ね貴方に会いにきたの貴方を救うために」


「救う......?」


「お姉ちゃん知ってるんだよ貴方の腕の傷も貴方の部屋のロープも貴方が先月骨折した理由も全部」


 なんでバレてるのよ......誰にもバレてないはずだったのに......。


「お姉ちゃんにはお見通しなんだからね!」


 そう言うと彼女は私を強く抱きしめた。


「辛かったよね、ごめんね何にもできなくて、こんなお姉ちゃんでごめんね」


 謝らないでよ......。


「お姉ちゃんは悪くないよ! あの時私を庇って......」


「それでも! 貴方は救われなかった、私だけ死んで勝手に楽になって貴方はずっと苦しみ続けてるじゃない!」


「だから私もそっち行くよ」


「きちゃダメ」


「え?」


「私ね今日は貴方を止めにきたの貴方がもう死ぬってわかったから」


「いいよ止めなくて、こんな地獄より酷いとこなんてないんだから死後がどんなでも関係ないよ」


「ダメよ! 貴方は生きて」


「嫌だ! こんなとこで生きたくない! どうあがいたって父親からは逃げらんないしこの世界のどこにだって私の居場所なんてないんだよ!!!」


 思わずのどがかれるほど叫んでしまった......近所迷惑だな。


「貴方にはまだ命があるその地獄から抜け出す力がまだあるの! だから貴方は今すぐここを抜け出してのまだ私たちの知らない世界を見て! きっと居場所見つかるよ」


「抜け出すなんてそんな無理だよ......」


「キャラクターの書いたおっきな缶」


「え?」


「私が昔大切にしてた缶だよ貴方私の形見だって引っ越した時に守ってくれたでしょ?」


「あ!」


「あそこに全てあるからあとはあの缶の中身で飛び立ってあの地獄から」


「お姉ちゃん......」


「ほら! もう夜が明ける! 早く行って」


「お姉ちゃん!」


「さぁ早く! あなたの世界で幸せになって!」


「お姉ちゃんありがとう!」


 その瞬間太陽の光が差し込み私の前から彼女は消えた。


「お姉ちゃん私頑張るね......」


 その日私は目一杯泣いたあとお姉ちゃんの缶の蓋を開けた。


「お姉ちゃん......」


 缶の中にはお姉ちゃんが必死にためて隠してきたお姉ちゃんの努力の結晶と一枚の赤い染みのついた手紙が入っていたが詰まっていた。


「私使えないよ......」


 一緒に入っていた手紙を開くと私は腰を抜かした。


[美咲より幸へ]


「お姉ちゃんにはかなわないな......」


 その日の夜私はお姉ちゃんの形見を鞄に詰め込み誰にもバレずに家を出た、それから昨日回った場所をもう一度回り最後姉の墓に手を合わせた。


「お姉ちゃん行ってきます」


 私は朝日が登りそうな空を背に飛行機に乗り込んだ。

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