第八話 体で払ってもらおうか
金がないならメイドさんになれ。そう告げると、女勇者は不機嫌そうに顔をしかめた。
「はぁ? なんであたしがメイドなんてやらないといけないのよっ」
「別に嫌やらなくてもいいけど? だったら俺の家を弁償してくれって話だ」
「……お、お金ならないわ」
「じゃあ体で払え」
「げ、ゲス野郎! 最低! 変態!」
「おいおい、エッチな方向で勘違いするなって言ってるだろ? 俺が要求してるのはメイドさんだぞ?」
「顔がいやらしいわ」
「それは生まれつきだ」
文句なら父に言ってくれ。クソババア(母)はかなり美人なのに、どうして俺は平凡な父親に似てしまったのだろう。もしイケメンだったら彼女できてたのかなぁ……。
って、顔のことはどうでもいいんだよ!
「それで、どうするんだ? まぁ、本当に心の底からイヤなら、そのまま帰ってくれてもいいよ。勇者としての良心が痛まないなら好きにしてくれ」
「くっ……」
俺の言葉に、女勇者はなおも苦々しそうに表情を歪めていた。
何やら葛藤しているらしい。
だが、やっぱり彼女は勇者だ。
筋の通っていないことをするのはプライドが許さないらしい。
しばらく悩んでから、諦めたように肩を落としながら頷いた。
「……一カ月だけ。一カ月だけで、いいのよね? それだけ我慢したら、許してくれるのね?」
「うん。一カ月、俺のお世話してればいいよ」
「……エッチなこともするつもり?」
「する」
「最低! 変態! あたし、まだそういう経験ないのにっ」
「――っていうのは冗談な。そんなことしたらクソババアに殺される」
「こ、殺される? え? あ、そうなの……」
真顔で俺が『殺される』と言ったからだろう。この言葉は冗談ではなく本当だと理解してくれたようで、女勇者は頷いた。
実際、冗談ではない。俺の母親は厳しくて曲がったことが嫌いである。だから息子が犯罪者になろうものなら容赦なく対処してくるだろう。
「なら、我慢する……メイドさんになるぅ。悪いことしたのは、本当だしね……はぁ」
女勇者は泣きそうになりながらもコクリと頷いた。さっきまでの毅然とした態度はどこにいったのか。年相応の女の子らしくシュンとしていてなかなか可愛かった。
「よし、じゃあ家を直すか」
メイドさんも手に入れたところで、俺は早速【時間魔法】を遣って空間の時間を巻き戻した。
時間を戻すと、瓦礫が勝手に動いて元の状態に戻っていく。
それを見て女勇者はポカンと大口を開けた。
「え? え? 何それ……まさか【時間魔法】!? 失われた古代魔法の一つじゃない!! なんで使えるの!? っていうか家を戻せるならあたしが弁償する必要なかったんじゃないの!?」
うん、弁償する必要はなかったけど。
「でも、メイドさんがほしかったから」
「騙したわね!? もうお家に帰るからっ」
「おっと、一度約束したことを勇者様が破るわけないよな? まさか、そんなことしないよな?」
「ぐぬぬ……げ、ゲス野郎! いいわよ、上等じゃない! あんた、やっぱり普通じゃないわ……このまま監視して、あんたの正体を暴いてやるんだから!」
ぎゃーぎゃー喚く女勇者は無視。元に戻った家に入って、異常がないかチェックする。
……うん、異常なし。
って、ああ! エロ本が細切れのままだ……女勇者が来る前まで戻せば良かった(泣)
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