第三話 勇者でも割れない最強の壺を作ってみた
勇者でも割れない最強の壺を作りたい。
そのために、まずは素材を入手することにした。
とりあえず目を付けているのは、歴代の勇者が愛用している『オリハルコン』という貴重鉱石である。
特性は、とにかく頑丈。硬いらしい。絶対に壊れないことで有名だ。
これで壺を作ったらたぶん勇者でも割れないだろう。
「入手方法は……ふーん、魔界のキングゴーレムを倒せばいいのか」
本で調べてみたところ、わざわざ魔界まで行かないといけないみたいだ。
めんどくさいなぁ。
魔界とは人間界とは違う世界の呼称で、人間ではない種族が支配している地である。行くだけでも危険だが、魔界にしか存在しない素材が多数あり、一部の冒険者や勇者は一攫千金を狙って魔界を探索するらしい。
まぁ、人間界にも多数のモンスターやダンジョンが存在するので、魔界に行く必要はないと考える勇者もいるらしいが、それはさておき。
魔界にも色々種類がある。たとえばエルフが支配する世界とか、ドワーフが支配する世界とか、それらも全て俺たち人間の間では『魔界』と呼んでいた。
オリハルコンが入手できるのは、魔界の中でも最上級危険世界に分類される『カオス』と呼ばれる場所。支配する種族はなく、あらゆるモンスターが常に領域を争い合っているヤバいところだ。
まぁ、魔法と剣を極めた俺ならたぶん大丈夫だろ。そう思って、俺は気軽に転移魔法を使った。
「【転移】」
一瞬の浮遊感の後、俺は世界を移動する。通常なら王城にある転移魔法陣でしか世界の移動はできないが、俺はあらゆる魔法を極めているので問題なく行使できた。
「【死ね】」
早速ゴーレムに遭遇。一匹見つけたらうじゃうじゃと集まってきた。その中に、一際でかいゴーレムも確認。あいつがキングゴーレムっぽいな。
なんかいっぱいいるので、最近頑張って考えた【即死魔法】を使ってみる。
理論とかはよく分からないけどフィーリングでやってみた。
「あ、死んだ」
とりあえずゴーレムはみんな倒せた。後にこの話をとある女勇者に話したら「ば、ばばばばバカじゃないの!? ゴーレムって勇者がパーティー組んで、一体を仕留めるのに数日かかるのよ!? それなのに一瞬で、しかも討伐難度測定不能のキングゴーレムを倒すなんて、なんでそんなに強いの!?」って言われた。強さの理由なんて知らんよ。だって魔法なんて適当にやったら覚えれたしな。
後に出会う女勇者さんの話はとりあえす置いといて。
ともあれ、キングゴーレムの残骸からオリハルコンを入手した俺は、意気揚々と人間界に戻った。
早速【錬成魔法】の奥義を使ってオリハルコン製の壺を作成してみる。空色に薄く発光したオリハルコンの壺は、なんかすごい高そうだった。
これなら勇者でも割れないでしょ!
と、いうわけで、壺が完成したのだが。
「……勇者っていつ来るんだろう」
失念していたのだが、勇者がこの村にいつ来るのか分からない。前に来たのも五年前である。確か、あの時は近くの山にいる熊のモンスターを調査しに来てたっけ。
ちなみにその熊のモンスターは俺が剣術の修行中に一撃で倒した奴だ。当時の勇者はあれを危険難度Sに認定して帰って行ったなぁ。
うーん、とりあえずこのあたりで事件でも起こせば、調査で来てくれるかな?
とりあえずやってみよう。
「【時空斬】!」
勇者を呼び寄せるために、俺は早速近くの山を『消失』させた。魔法を使っても良かったのだが剣術もせっかく極めたので、奥義を使うことにした。
修行で使った山である。あの山はモンスターの巣窟になっているので、街の住人は誰も近寄らない。一応、人がいないことも魔法で確認したので人的被害はゼロだ。
いきなり山がなくなったら、流石に勇者も調査しにくるでしょ。
呑気にそう考えて、家でゲームしながら待つこと数日。
ようやく、勇者が町にやってきた。
いよいよ、俺の壺とのご対面である――
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