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 どうして言葉が必要なのだろう。僕と彼女は違うものだったのだろうか。多分そうなのだろう、今の彼女の中身を僕が知らないということは。


「どうしてそこにいるの」

「それは私が言いたいことなのに」

「どうして僕がここにいるか……僕にもわからない」

「こちらが正しいところなのに」

「どうして」

「私がここにいるから」


 僕はここにいたい。けれど僕がここにいたら僕は彼女を奇異の目で見る誰かのことを意識してしまう。あの場所に所属して外に出るならば、そうなるしかない。だって行動は変だと僕だって思っている。だから、それは嫌だ。もしかしたらそれが僕の理由かもしれない。

 それが理由なら、取る手は他にもある。僕と彼女が違うものならば、あと一手だけ。僕と彼女が、……。

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