第2話
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「えっと……ここかな?」美波の家の前で少し迷った後、ようやく涼介の部屋の前に辿り着いた。
「あのーすみません。松乃さんのお宅でしょうか?」
インターホンを押して呼びかけると、「はい」という返事とともにドアが開かれた。出てきたのは眼鏡をかけた男性だった。
「えっと……どちら様でしょう?」
「あ、申し遅れました。私、高橋と言います。涼介君と同じ学校の友達で、今日涼介君に用があって来たんですけど」
「ああ、涼介の友達の方でしたか。涼介なら今出かけてまして」
「そうだったんですね。ちなみにどこに行ったかご存じありませんか?」
「さぁ?ちょっと分からないですね」
「分かりました。ありがとうございます」
私は頭を下げてからその場を離れた。「涼介君が帰ってくるまでここで待たせてもらおっかな」
「んー……」
「あら、どうしたの?」
「いえ……なんだか外が騒がしいような気がして」
「ふぅーん。ま、気のせいじゃない?」
「……ですよね」
――コンコン
「はい」
「あの、僕だけど」「おお、開いてるぞ」
「お邪魔します」
「いらっしゃい」
僕こと涼介はいつものように師匠の元へ向かった。
「それで今日は何をするんだ?」
「とりあえずはプロットの作成ですかね」
「ほう、それはどういうものだ?」
「簡単に言えば物語の骨組みみたいなものです。物語の流れとか、登場人物の設定とかも書き込んでいきます」
「なるほどな」
「それと今回は読者目線で読んでもらいたいので、できるだけ感情移入しやすいようにしましょう」
「了解だ」
「じゃあ早速始めていきましょうか」
「うむ」
「えっと……『魔王を倒した勇者は世界を救った英雄となった』」
「うん」「『だが、その代償は大きく、平和になった世界で彼は孤独になっていた』……こんな感じです」
「ふむ。つまりこの世界に居場所が無くなっているということだな?」
「はい。なので次からはこの主人公の気持ちになってみてください。あ、でもあくまで主人公になりきるのではなく、あくまでも自分の体験談として書いてください」
「分かった。やってみよう」「それではお願いします」
「『魔王を倒した勇者は世界を救った英雄となった』」
「…………」
「……うーむ、どうだろうか」
「えっと……そうですね。悪くはないと思います。ただ、もう一歩踏み込みたいところがあるんですよね」
「ふむ、例えば?」
「えっと、こういうのはどうですか?」
「『だが、その代償は高く、平和になった世界で俺は孤独になっていった』」
「ふむふむ」
「これだと『孤独な』が強調されすぎていて、あまり良くないかと。あと、もう少し他の人と交流する場面があってもいいかもしれません。例えば『酒場』とか」
「なるほど……」
「『俺』が『酒場』に行くことで、『仲間』ができるわけだな?」「はい。そこで初めて『仲間』と呼べる存在が出来るんです」
「『仲間』とは具体的にどんなものなのだ?」
「えっと、同じ目的に向かって一緒に行動する人たちのことですね。冒険者ギルド的な組織に所属する人もいれば、個人で活動している人もいるはずです」
「なにか依頼があればそれを解決することで報酬を得る。そういう仕組みになっているのか?」
「はい。基本的にはそうですね。他にも、困っている人を無償で助けたり、依頼を受けずにお金を稼ぐことも出来ます」
「色々あるのだな」
「はい。また、時には協力し合うこともあります」
「『協力』というのは?」
「例えば、誰かが魔物に襲われているところに別の人が通りかかって、助けを求められた場合、普通なら無視してしまうところですが、もしその場にいたのが強ければ、助けることもあるかもしれないということです」
「確かにそうだな」
「そして主人公は強いため、弱い人の頼みを聞くことが多いです。しかし、だからといって全ての人に力を貸していたらキリが無いので、ある程度の線引きが必要となってくるんです」
「つまり、その線引きをするために『協力』が必要になるという訳だな?」
「はい。大体そんな感じです」
「よし、では続きを書いていこう」
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