第15話 戦い
「健司、録音しろよ。あとスピーカーモードにしてから出て」
「うん。わかった」
「健司くん、環奈ちゃん先生から教わった情報、忘れてないよね?」
「忘れてない」
「お兄ちゃん、頑張って!」
「うん!」
三人は悲壮感漂う面持ちで阿久津健志にエールを送った。
「もしもし」
「おい、阿久津、まだアカウントもらってないんだけど?いつ送るんだよ。あまり俺たちを怒らせんな!」
「その話なんだけど……」
「は?」
「実は、二人を脅迫罪と恐喝罪で訴えたんだ。あはは……」
「はっ?」
「金剛さんと青山さんを脅迫罪と恐喝罪で訴えたんだ」
「あのさ」
「うん?」
「お前、自分の立場分かってて言ってんの?」
「立場?」
「昔散々俺たちのペットとして扱かれてきたんだろ?奴隷という
金剛真斗は後ろに行くにつれて、語気を強めて剣幕で捲し立てる。温厚な阿久津健志はこういう輩の怒声を大の苦手としているので、顔を顰めて、マイクを手で塞いでから自信なさ気に三人の顔を見る。
「本当にあいつムカつく!健司!俺がギャフンと言わせたろうか?」
「健司くん、あんなのハッタリでしかないよ。勇気を出して!」
「お兄ちゃん!ファイト!終わったらマッサージしてあげる!」
三人とも表現の仕方は違えど、阿久津健志の力になりたいと言っている。そんな心優しい仲間を持つ彼は、もう昔の不屈だった阿久津健志ではない。阿久津健志は真剣な顔を三人に見せてから、携帯のマイクから手を離す。
「おい、阿久津!何か言ってみたら!?また昔見たいにビビってんのかよ。あははは!!!ん?京介。あ、ああ。分かった」
「……」
金剛真斗は、青山京介に携帯を渡した。どうやら何か言いたいことがあるらしい。
「阿久津くん、見ない間に結構成長したね」
「……」
「でもね、阿久津くんは俺たちには勝てないよ。だから最後のチャンスを与えてあげる。今すぐ訴えを取り下げて。じゃないと、本当に取り返しのつかないことになるからさ」
冷静な声音で言う青山京介。
だが、阿久津健志は
「青山さん、どんな行動をするのかは君の自由だけど、それによってもたらされる被害に対して責任を負うのも君だよ。あはは」
と、淡々と話した。
「ふ、ふははははははははははあああ!!!阿久津くんの分際で!クズで奴隷でペットで道具の分際で!調子に乗るな!!!くそ、クソクソクソクソ!!!!あああああああああああああああああああああ!!!俺を怒らせるなんて、お前、覚悟しろ!ただじゃ済まないから!!!ああああ!全部バラしてやる!もう遅いよ。お前の過去全部バラしてやる!!!!!!!!!!!!」
「言ったでしょ?どんな行動をするのかは君の自由だと」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、青山京介は声の限りに叫んでは電話を切った。
「はあ……」
阿久津健志は頭を抱えて天井を見上げる。疲れているようだ。それもそのはず。こんな殺伐とした会話なんかしたこともなければ、こんなふうにタチの悪い脅迫を受けたことも初めてだ。くたびれた様子の阿久津健志。
「本当に、これでよかったのかな?」
「健志くん、心配しないで。それでいいから」
「けど、個人情報特定されて、過去まで……ん?」
心配する彼氏を慰めるべく、早苗ちゃんが、阿久津健志を思いっきり抱きしめる。
「大丈夫だよ。私を信じて。絶対よくなる。あと、土曜日にうちに来てよね。一緒にライブでカミングアウトするから」
「……うん。あと、感謝するよ。早苗ちゃんがいてくれたから訴訟を起こそうという気になれた」
「健志!お前はよくやった!格好良かったよ!あいつら、都合悪いこと言われたからキレただけだよ。もう昔みたいに泣き寝入りする必要はない!奴らに健志のものを奪う権利なんかないから!今度は俺たちがやり返す番だ!」
「そうね……ありがとう。真司のおかげで青山さんに最後まで言えた」
「お兄ちゃん!今日は私の部屋で一緒に寝よう!」
「あはは……それは勘弁してくれ」
不安と安堵が入り混じる編集室の中で、四人はお互いの絆を確かめ合う。
追記
さあ、これからどうなるのか……
気になる方は、★と♡を!(チラッ)
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