こうして私は警察に頼らず戦うことを決意した。

次の日の昼休み、私は同僚たちに話を聞かれないように席を外すと、昨夜作成した訴状のコピーを持って会社近くの喫茶店に入った。そこでコーヒーを飲みながら待つことにする。

数分後、見知った顔が現れた。

「こんにちは」「こんにちは。すみません、急に押しかけてしまって」

現れたのは編集長の柳枝さんだった。私の姿を認めると彼は手を上げてこちらに向かってくる。

「いやいや、構わないよ。それより、君の方こそ大変みたいじゃないか」「えっ……どうしてそれをご存じなんですか?」

まさかすでに知っているとは思わなかった。

「実は俺も昔同じ目に遭ったことがあってな。その経験から色々とアドバイスができるかと思って来たんだが……必要なかったかな?」

「いえ、そんなことはありません。ぜひ聞かせてください」

私は頭を下げた。やはり経験者の言葉を聞くのが一番良い。

「じゃあ、早速だが本題に入ろうか。君は一体何をしようとしているんだ?」

柳枝さんは単刀直入に切り出してきた。この人はこういうところがあるから侮れない。下手な小細工をしても無駄だということがよくわかる。

「はい、私はとある人物を訴えようとしています」

「訴えるって、誰を?」

「父です」

「ほう、親父さんをねえ」

柳枝さんは顎に手を当てて考え込む。

「しかし、何でまた親父さんを訴えるなんてことになったんだ?」

「詳しくは言えませんが、父が騙されているようなのです」

「なるほど、それで訴えようとしているわけだ」

柳枝さんは腕を組んでうーんと声を出した。そして、首を横に振る。

「残念だが、それは無理だ」

「なぜでしょうか」

「法律で決まっているからだ。もし仮に君のお父さんが誰かを訴えた場合、相手は負けることになる」

「そうなんですか?」

知らなかった。てっきり訴えた方が勝つと思っていたが、そういうわけではないのか。

「それに、訴えられた方には弁護士がついて徹底的に戦ってくる。勝ち目は薄いだろう」

「そうですか……わかりました。わざわざありがとうございます」

柳枝さんの言うことが事実なら、今回の件はかなり難しいことになる。

「まあ、諦めずに頑張れよ。相談くらいだったらいつでも乗るからさ」

そう言い残して彼は店を出て行った。

「困ったな……」

私は頭を掻いた。こうなった以上、自分で何とかするしかない。

しかし、どうすればいい? このままでは破滅だ。何か策を考えなければ……。


それから数日が経った。

「ただいま」

いつものように帰宅すると、玄関に見慣れぬ靴があった。来客だろうか。父はリビングに居た。ソファに座っている。

「おかえり」

「珍しいな、今日は早いんだな」「ああ、ちょっと大事な用事があってね」

父はテーブルの上に書類を広げていた。「今度出版する予定の本なんだが、ここに書いてある内容について質問したいことがある。この後時間はあるか?」

「ああ、問題ない」

私は父の向かいに座ると、彼の広げる資料に目を落とした。

「これは、どういうことだ?」そこには私が提出した訴状と同じ内容が書かれていた。

「見ての通りだよ」

「ふざけるな! お前はこんなものを出して、どうするつもりだ!」

思わず大声で怒鳴ってしまった。周囲の視線が集まる。しかし、構ってはいられない。

「落ち着け、別に悪いことをするわけじゃない。お前が心配するようなことはない」

「心配? 心配だと? 俺はこんなものを出されることに心当たりがないぞ!」

「いいから、ちょっとこっちへこい」

私は父に連れられて書斎に向かった。部屋に入ると、父はドアの鍵をかける。

「どういうつもりだ!」「だから、言っただろう。悪いようにはしない。とにかく話を聞け」

私は椅子に座りなおすと、父と向き合った。

「まずは確認するが、お前はこの訴状に書かれている内容をどこまで知っている?」

「何も知らない。父さんに相談しようと思って帰ってきただけだ」

私の返事を聞いた父は大きくため息をついた。呆れたような顔をしている。

「まったく、これを書いたのは誰だか知らんが、とんだ迷惑だ」

「書いたのは私だ」

「何だって?」

父は驚いた様子で目を丸くした。それから数日が経った。

「ただいま」

いつものように帰宅すると、玄関に見慣れぬ靴があった。来客だろうか。父はリビングに居た。ソファに座っている。

「おかえり」

「珍しいな、今日は早いんだな」「ああ、ちょっと大事な用事があってね」

父はテーブルの上に書類を広げていた。「今度出版する予定の本なんだが、ここに書いてある内容について質問したいことがある。この後時間はあるか?」

「ああ、問題ない」

私は父の向かいに座ると、彼の広げる資料に目を落とした。

「これは、どういうことだ?」そこには私が提出した訴状と同じ内容が書かれていた。

「見ての通りだよ」

「ふざけるな! お前はこんなものを出して、どうするつもりだ!」

思わず大声で怒鳴ってしまった。周囲の視線が集まる。しかし、構ってはいられない。

「落ち着け、別に悪いことをするわけじゃない。お前が心配するようなことはない」

「心配? 心配だと? 俺はこんなものを出されることに心当たりがないぞ!」

「いいから、ちょっとこっちへこい」

私は父に連れられて書斎に向かった。部屋に入ると、父はドアの鍵をかける。

「どういうつもりだ!」「だから、言っただろう。悪いようにはしない。とにかく話を聞け」

私は椅子に座りなおすと、父と向き合った。

「まずは確認するが、お前はこの訴状に書かれている内容をどこまで知っている?」

「何も知らない。父さんに相談しようと思って帰ってきただけだ」

私の返事を聞いた父は大きくため息をついた。呆れたような顔をしている。

「まったく、これを書いたのは誰だか知らんが、とんだ迷惑だ」

「書いたのは私だ」

「何だって?」

父は驚いた様子で目を丸くした。

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