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「う~ん……」

 うなされながら月人はゆっくりと目を開けました。どうやら無事のようです。

 「あ~……ここどこだろう……?」

 月人は一目見て、ここが元居た月ではないとすぐにわかりました。なぜなら空が今まで見たことのない、美しいオレンジ色だったからです。月にいるのであれば、こんな空の色はありえません。

 「……ほんとにどこだここ?」

 そう言って立ち上がり土埃を軽く払うと、辺りを見渡しました。見えるのはきれいな色の空と辺りをぐるっと囲った柵。さっと見た感じだと、それ以外は何も見当たりませんでした。月人が柵に近づき覗き込むと、地面にボロボロの建物らしきものとよくわからない巨大な物体が多く置かれていました。どれも月にはなかったものです。

 「見たことないものばかりだ……!何だろうあれ!今すぐそっちに行ってみたいけど……」

 好奇心旺盛な月人は早速、見たことがない建物や物体に興味を持ちました。興奮しているのかぴょこぴょこと小さく跳ねています。今すぐにでも近くで見たい!と体を乗り上げて下を覗くも、

 「……さすがに飛び降りるのは危ないかぁ」

 かなり高い場所にいるのか、地面との距離が遠すぎてさすがにそれはあきらめたみたいです。どうしたものかと悩むそぶりを見せながらくるりと回れ右をすると、そこにはドアが付いた立方体がありました。さっきまで前しか見ていなかったので気が付かなかったのでしょう。今度はこの立方体に興味が移ったようで、たったったと小走りでドアに近づきます。

 「これは……ドア?なのかな?で、これがドアノブと……。丸いしすごい変な色だなぁ、わっ冷た」

 月人がドアノブを触ると、冷えていたのか少し驚きながら手を離しました。そして、改めてそっとドアノブを握りました。

 「ちょっとざらっとしてる。不思議な感触だなぁ」

 手でドアノブを握ったり、いじりながら楽しそうに言いました。その表情からこの状況を楽しんでいるように見えます。

 「あ、写真とろう!ってうわ!手が汚い!」

 そう言って手で汚れをはらってから肩にかけていたカメラ、四角い本体にレンズか二つ付いているものを手に取り近くで一枚、数歩下がって立方体ごと一枚撮りました。うまいこと取れた(フィルム式なので現像するまで最終的な結果は分からないですが)見たことがないものを写真に収めることができて満足そうです。

 「……で、これどう開けるんだろ?」

 一度落ち着いてから、月人は改めてドアに向かいました。そう、ドアを開けなければここから移動することができないのですから。しかし月では見たことがないタイプなのでしょう、このドアの開け方がわからないようです。両手でドアノブを包み、試しに押したり引いたり揺らしたりしてみました。するとドアノブを右にくるっと回してみてみたところ、ドアノブが回りました。

 「おっこれは!」

 手ごたえを感じ、試しにドアを強く押したところ大きな金属音と共に開きました。

 「うるさっ!けど開いた!」

 ドアを開けた先には、下に続いているであろう階段がありました。光源らしい光源がないのか下はほぼ真っ暗です。

 「暗いな~。とりあえずここから降りれるのかな?」

 月人はドアからの光とわずかな光源を頼りに、ゆっくり慎重に階段を下っていきました。

 「この先に面白いものが……!待ってろよ~!」

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月兎日記 水姫 @undaredia

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