五、
両親は役に立たなくなった私を、それでもどうにか金にしようとした。顔の一部を焼き、これまで祓った憑きものに祟られた女として見世物小屋へ売る計画だった。
憑きものが見えなくなって久し振りに確かめられた両親は、醜く肥えて化け物のようになっていた。痩せ細った自分の腕をさすりながら、両親が初めて私を認めた日の喜びも、いつかはと希った家族の姿も、もうどこにもないのだと思い知った。
着のみ着のまま、目につくところにあった金を掴んで家を飛び出した。しかし行くところなど思い当たらない。既に親族には、金に汚い両親と私の力を疎まれ縁を切られていた。迷った挙げ句、近くの町医者へ駆け込み懐の金を突き出して助けを願った。今思えば「憑きもの祓い」など医者が真っ先に嫌いそうなものだが、その時はそんなことすらも分からぬほどに必死だった。
幸い医師は憤ることもなく私を受け入れて診察し、栄養不良の結果を与え二階の病室に匿ってくれた。そこへしばらくして現れたのが、良人だった。
医師は密かに、私を引き取れそうな相手を見繕って声を掛けていたらしい。憑きものから放たれた恩を感じていた良人は、恐らくその筆頭だったのだろう。間もなく私は良人の借りた家へ移り、良人が自分の家族や私の両親と話をつけるまでの一年ほどをそこで過ごした。
結婚の申し出はそのあと、誰か心に決めた人がおらぬのなら、と控えめな言葉を選んだ良人に、滲んだ影を眠らせた。
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