第41話 報復に次ぐ報復⑤

 僕の病院での診断結果は、全治3ヶ月だった。

鼻が骨折し、肋骨、左腕の骨にヒビ、鞭打ち。全身打撲、頭を強打しているので、安静にするように言われた。

 それでも極道御用達のヤブ医者なので、入院はできないと言われ、入院することなく程々の手当てで帰ることができた。自宅に帰れたのはいいが、身体中のあちこちが炎症していた為、毎日熱が上がり、結局家から出る事ができたのは、一週間程経ってからだった。

 その間、自宅にはチームの仲間達が見舞いに来てくれていたので、退屈はしなかった。久しぶりに平和な時間を少し過ごすことができたと思う。勤め先の社長には、本当の事言って、自主退社した。金銭的には、あんなとの結婚資金として、数ヶ月は生き延びる貯蓄があったので心配はなかった。

 一つの恋が終わり、心残りだった問題も解決したことにより『一から人生をやり直したい』という心機一転環境を変えたいという気持ちが芽生え始めていた。

 僕は動けるようになると、すぐに就活を始めた。それでも傷だらけの顔でハローワークに毎日のように足を運ぶ僕を見て、職員は苦笑いをしていたし、他の求職者は僕と関わらないように避けられているのがわかった。いつも挨拶してくれるのは、駐車場の警備員位だったが、そんな事は一切気にならず、人生をリセットするような爽快感が勝っていた。


金田とやり合ってから、2週間経った頃だった。

その日は、まだギシギシ言う体に鞭をうってハローワークに行き、アルバイト情報誌を家で眺めていた。

2週間経ってもまだまだ体は痛み、回復していたのは、顔の腫れと熱が下がった位だった。

 ベッド少し横になっていると、普段ほぼ鳴ることのない家のチャイムが鳴った。いつもウチに来るのは、NHKの集金か宗教の勧誘位だったので、構わず居留守を使う事にした。それでも、しつこく2~3回チャイムが続いた。僕は少しイラッとして、いい加減文句を言おうと、重たい腰を上げ、勢いよくドアを開けた瞬間だった。ドアの間に足が入るのが見え、顔を上げると金田の若い衆が立っていた。

 僕は急な出来事に焦り、咄嗟にドアから手を離し、構えようとした瞬間だった。


『ビリッ』


 息つく暇もなく、若い衆が手にしていたスタンガンを当てられ、僕は一瞬でその場で倒れこみ、気を失ってしまった。

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