第38話 報復に次ぐ報復②

 誰が発明したかはわからないが、車は最高の凶器だった。僕は工場の中に集合している人の塊に車を突っ込み、3人と接触し1人にはモロに接触し吹っ飛んでいた。僕は、奴らが怯んでる隙に車から降り『オラー』と近い奴から警棒でぶっ叩いた。襲撃に合い、逃げ惑う奴らを僕は全力で追いかけ回した。

 大勢との喧嘩で、一番気をつけなきゃいけないのは、足を止めないこと。足を止めると、後ろからケリとか投げられたりして倒されてしまう。倒されると終わる。雨のようなケリを食らい、後は我慢勝負になる。僕は、当たっても外れても構わず、警棒を振り回し、奴らを追いかけ回した。もちろん狙うは、金田の頭。金田をガードするように兵隊が立ち塞がった。

そいつをかわすと更にまた1人。

 そいつが強姦野郎だった。あんなを犯った奴。『テメーもだよ!』と思い、警棒を喉に突き、頭が下がった所に、全力で警棒を振り下ろした。『ゴンッ』と鈍い重たい音がし、手には石でも叩いたよーな衝撃が伝わった。崩れ落ちる強姦野郎をかわし、金田を追った。僕は追いかけながら、兵隊から体当たりやケリを食らったが、バランスを保ちながら、警棒で応戦した。

 警棒は、ガード越しや肩とかに当たる程度で、中々致命傷を与えることがなかった。徐々に僕の体力がなくなり、気づけば僕の足は止まっていた。奴らは正気に戻り、僕の行く手を阻むように僕を囲んだ。僕が工場の角にいて、奴らは僕と対面するように立ち、手にはスパナやハンマーを握りしめていた。

 肩で息をする僕を見て、さっきまでの焦りようが嘘のように金田が笑っていた。

『ここがお前の墓場になっからよ!覚悟しとけ、コラッ』

何を今更。死ぬ覚悟を持って来てる僕には、奴らはまだ覚悟してないと察し、怖さはなかった。


『やれっ』

金田の号令とともに若い衆が武器を振りかざし向かってきた。僕も奴らに向かって突っ込み、一番前の奴に飛び蹴りを浴びせ、警棒を振り下ろした。その瞬間、固い物が僕の後頭部に下ろされた。僕が警棒で応戦しようとすると、ハンマーが下から顔面に振り上げられた。丁度、前歯にヒットし、歯が欠けた。口より後頭部から首にかけて痛みが走る。痛みは一瞬しかなく、ゴンゴンという音と熱いという感覚しかなかった。そして僕は、そのまま倒れてしまった。

 その後は殴る蹴るの防戦一方だった。僕はうずくまるように体を丸め、奴らの攻撃を受け続けた。意識を保つ事だけを考え、頭だけを守り、数分間攻撃を受け続けた。体中のあちこちが悲鳴を上げていて、体は固まって言うことが聞かなかった。それでも、ギリギリ意識だけは保つことができた。

 そして、ようやく金田の出番がやってきた。金田が僕に近づき、何かを言いながら、僕の横っ腹に蹴りを入れた。既に僕は、耳もやられ、金田の声が微かに聞こえる程度だった。何を言ってるかわからなかったが、僕はこの瞬間を待っていた。大振りの蹴りが3発目が入る瞬間。僕は一気に体を起こし、金田に体を預けるようにもたれながら、奥の手を使った。


スタンガンだ。

スタンガンは、初めて使ったが、予想を遥かに超える攻撃力でビックリした。金田は、一瞬で意識が飛び倒れこんだが、更に追い込んで数秒間スタンガンを当て続けた。とりあえずは目的達成。後は逃げるのみ。

 僕は力を振り絞って、立ち上がり、スタンガンを手に手を前に出し、威嚇した。スタンガンに驚いたのは僕だけではなく、奴らも警戒している様子だった。

 僕は、今にも飛びかかるぞという体勢を取りながら、車までの最短の道を探した。突っ込んでも、奴らとの距離が少しある為、また倒されるのが目に見えていた。頭を無理やりフル回転させた。僕が少し下がると、奴らが少し詰めてくる。閃いた。

 サッカーなどでよく使われる手法で、ゆっくりと相手を引きつけて、一気にスピードを上げ、相手を抜き去る。それしかないと思い、僕は工場の角の隅までゆっくり下がりながら、奴らとの距離を縮めた。

すり足で下がり、距離が5メーター位になった瞬間。


『よーいドン』


 ダッシュした。僕は、奴らの人と人の隙間をジャンプしながら、うまくすり抜けた。着地した瞬間、足はもつれ、激しい頭痛と耳なりが鳴り、それら全てを我慢しながら、必死で走った。車までたどり着き、後ろも見ずに車に乗り込み、即ロックし、エンジンを回した。車の周りには、奴らがいたが、何にぶつかろうとぶつけられようと構わず、バックでシャッターを超え、アクセル全開で走り抜けた。

僕は、どうにか逃げきる事ができたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る