第26話 加藤②
『ゆうじ、マコトと何かあったのか?』
マコトが僕の家に来てから数日後、まさから連絡がきた。まさは第一声で興奮した様子で僕に話してきた。
『あったって程でもないよ。逆に何かあったんか?』
『何も聞いてねーのか?今、あいつやべーよ』
僕はこの言葉で加藤との件で何かあったのだろうと察した。
マコトが僕の家に来た日から数日後。マコトは比山さんの組事務所へ向かった。恐らく比山さんの力があれば、負の連鎖を止められると思ったのであろう。事務所へ足を運び、比山さんに金田と加藤の関係性について話をした。マコトは比山さんに頭を下げ、『何とかして欲しい』と頼みこんだ。しかし、話はこじれた。
いくら親しくしてもらってても、あくまでもカタギと本職である。頼み事はしたとしても、カタギにシノギの事まで口を出されるという事は、比山さんの顔を潰すことになる。カタギの人間が組事務所にやってきて、若頭の自分に自分の所の若い衆の事をチンコロされるとなれば、面子が立たないのである。
『極道は顔で商売をする。だからこそ、面子が大事だし、面子を潰されれば、殺しあいまで発展する場合もある。極道に対して締め付けがキツくなればなる程、表立って派手なことはできなくなる。そうなれば、何もやらず何も言わずして、相手に怖がらせる事が必要になるので、今の時代は、特に面子が大事なんだ』
僕はまさの話に納得せざる得なかった。
もしかしたら、やり方を変えれば、話は変わっていたかもしれない。いつも全体像を俯瞰で見て答えを出していくマコトにしては、らしくないミスだった。
『俺に意見するとは、お前も偉くなったもんだな?それなりの覚悟持って言ってんだよな?そんなに助けたきゃ、お前が変わりにケツ持てよ、コラッ』
案の定、マコトは比山さんにクンロクを入れられ、事態は悪化してしまった。マコトは比山さんの兄弟分である、まさの兄貴に仲を取り持ってもらおうと、まさに頼んだという経緯だった。
結果、比山さんが金田に口を利く代わりに高額な慰謝料を請求された。AVのシノギを止めさせる代わりに1000万を請求されたが、現実的に難しいという事で車屋の仕事をほぼただ働きの状態でを任される事となってしまった。それでは生活していけないという事で、まさの兄貴の計らいでミカジメ回収などの仕事を回して貰う事になった。
この一件で、マコトはズブズブと極道の世界に足を踏み入れ、端からみれば極道の使いっ走り準構成員となってしまった。今考えると、すべては比山さんの書いた絵図にマコトはハメられたようにも思うが、ここまで来ると僕にはどうすることもできなかった。
『マコト、俺の家にきたんだよ。加藤の事聞かされて熱くなっちゃってさ』とまさに僕の所に来た事とその後の事だったので自責の念をまさに伝えた。
『とりあえずは様子見るしかねーよ』と宥められようにまさに言われ、僕は口唇を噛み締めた。今まで悪さをしていたツケが回り始めていた。負の連鎖が繋ぎあっていくように、次から次へと事態が悪化していった。僕達はなす術なく、深い渦へと飲み込まれていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます