第7話 いい女
僕とじゅんやが、さやと同棲しているみのるの部屋に行ったとある日曜日の話である。
家のブザー鳴らし、僕とじゅんやは『お疲れ~』と言うと、さやが笑顔で出迎えてくれた。
さやは『お疲れ様です!どうぞ、上がってください。』と僕達の靴を並べてくれていた。
『いつもごめんね~、おい、オメーのは激臭なんだから自分でやれよ』と僕がじゅんやに言うと、さやは『ほんとだよ』と笑顔で靴を並べてくれていた。
僕達は床にそのまま座り込み、昨晩の"集まり"について、あーでもない、こーでもないと一通り盛り上がっていた時だった。
「パァーン」
床のフローリングが割れるよーな音がした。
皆一同、一瞬時が止まり顔を見合わせた後に、「ごめん、俺です」とみのるが言った。
「お前、どんな屁してんのよ!」とじゅんやが突っ込み、4人は大爆笑した。その時だった。
『ヴォッ』
爆笑してる最中に、低音と同時に床がバイブのような振動を感じた。じゅんやがまた「今度はV8か!」とみのるに突っ込みを入れた。
(V8とは、車のV8エンジンの事で、マフラーから低い威圧的な音をV8サウンドと言う。)
『いや、俺じゃねーよ』とみのるが答えた。
僕には、察しがついていた。
今のV8サウンドは、みのるじゃない。多分、さやだ。わかってはいたけど、『やった?』とさやには聞けなかった。
いつもどんな事でも許してくれて、僕達に気揉みさせないよう笑顔で返してくれるさやだけど、流石に自分の屁をネタに笑いを作るのは嫌であろう。女は女。
そんな僕の気持ちとは裏腹に『お前だろ、俺じゃねーって』とバカ二人は言い合う始末。『空気読めよ、お前ら』とは、この場では言えずにバカ二人にイラついた。
更に微かに匂いが迫ってくるのだ。チラッとさやに目をやると、さっきまで笑っていたさやは真顔・・
話を変えようと僕が「V8ってよー・・」と言うと、さやが煙草を吸えと言わんばかりに「灰皿代えるね」とさやが立ち上がった。
『よしっ』と思った瞬間、さやのけつと足の間で温められていた強烈な匂いが解放され、僕を更にイラつかせた。
僕は早々に煙草を吸い、ゴジラのように副流煙を放出したのは言うまでもない。しばらくして、僕とじゅんやが帰る時には、さやがファブリーズをかけてくれていた。
本当にいい女だった。可愛い妹だった。
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