第6話 僕達②
『あいつは危ない』『キレたらやばいよ』
マコトの腰巾着のような僕だったが、小学校高学年頃になると、そんな噂がたつようになっていた。
外面は、ある程度明るさを持つようにはなっていたが、基本的にはコンプレックスの塊だった。人から怖がられることにより、下手な口を利かれなくなるという事を学び、喧嘩をすることが増えていった。
自分からは喧嘩を売ることはなかったし、挑発することもなかった。それでも普通に生活してるだけでも、喧嘩を吹っ掛けられることがよくあった。
"マコトの横でデカイ面しやがって!"恐らくこんな所だろう。
そんな相手には"こいよ、早く手を出してこい"と心の中で笑っていた。僕は、自分は正義であるという大義を持ちながら、普段のストレスを爆発させていた。
『俺は普通の人間に見られる為に毎日努力しているんだ。毎日我慢してんだよ!八つ当たりしたいのは、こっちの方だ。いつも我慢して普通に過ごしてるのに、お前は喧嘩を売るんだな?それならそれなりの覚悟もってんだろうな?骨折れた位じゃ喚くんじゃねーぞ!こっちは死ぬ気で生きてんだからよ』
口に出したことはないが、こんな思いを地でいくような少年だった。自己プロデュースをしていた訳ではないが、追い込めば追い込むほど、半笑いで向かっていくので、喧嘩相手は、狂気を感じるのも理解できる。
マコトは、年齢を重ねると共に悪さもエスカレートしていき益々不良街道まっしぐらだった。
中学を上がる頃には、学区内では敵がいない程、不良会では有名になり、数多くの犯罪歴と被害届により鑑別所に入ることとなっていた。
僕はいわゆるヤンキー、悪さや犯罪などに興味がなく、スポーツに明け暮れる普通の生徒になった。
学校同士の喧嘩などには参加したりすることはたまにあったが、それ以外は不良グループとつるむことはなく、マコトとも次第に疎遠になっていった。
僕達のチームを作る上で必要不可欠な人間がいる。"副総長のまさ"である。
まさは隣の中学の頭を張っていた男で、どちらかと言えば、兄貴が悪くて有名だった所があった。兄貴は暴走族から極道の道に進み、僕達のチームのケツモチであった。
まさは、中学の頃から金髪ロン毛、ピアス、タトゥーを入れており、不良界の顔も広かった。
喧嘩でのし上がっていくタイプではないが、よく頭が回り、ずる賢さとカリスマ性で有名になっていった。彼がいなければ、チームを作ることが出来なかったと思う。
この話をするのに欠かせない人間がいる。みのるとじゅんやである。
学年は一つ下の世代で、みのるは各中学を制圧していった男で、一つ下の世代ではマコトのような存在だった。じゅんやはみのるの連れで、いつも体を張った笑いを届けてくれるムードメーカーである。
みのるには、付き合いの長い彼女"さや"がいた。僕達の周りでさやを悪く言う人間はいなかった。
面倒見が良く、明るく、優しく、機転が利く。みのるは、体重90キロ以上ある大男だが、さやも大柄なタイプだった。
あんなとさやは、この後、親友並みに仲良くなるのだが、その前にさやの女性としての一面を見せてくれた話がある。
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