第5話 僕達①
僕はあんなと付き合い始めて、全てがあんなが中心の生活になった。毎日『おはよう』から始まり、仕事が終わるとあんなを迎えに行き遊び『おやすみ』と連絡をし合った。
仕事が残業で遅くなり、夜の10時11時頃になっても"僅かな時間でも会いたい"と自宅に足を運んだりもしていた。
あんなは、裕福とは言えない生活をしていて、錆び付いた螺旋階段が剥き出したような、古びたアパートに母親と二人で住んでいた。
仕事の帰り遅くなった時は、あんなのお母さんに『ご飯食べてく?』と夕飯を作ってもらい、ご馳走になったりしていた。
『部屋は狭いから』とアパートの駐車場の車止めに腰を降ろし、食べる夕飯は最高に美味しかった。夕食を食べ終わった後、僕はいつも自衛隊の三等兵くらいの兵隊が鬼軍曹に向かって敬礼をする位のテンションでガチガチのお礼をしていた。
あんな親子は、とても仲が良く『部屋が狭いから喧嘩をしても同じ部屋にいないといけない』と自虐のような話を笑って話していた。
親から勘当状態にある僕にとっては、少し羨ましい関係に思えた。僕は当時で親と会っていない期間が2年程だったと思う。原因は長くなるので、割愛させてもらうが、僕に原因があった。
僕の問題行動により『出ていけ!』と親父の蹴りが入り、上等と開き直りながら、段ボール一つ持って家を出た。
"俺は俺のやり方で上り詰めるから、今に見とけ!"
今思えば、承認欲求が強く、単に親に認めてほしかったのだと思う。
僕は生まれつき障害があり、物心つく頃には顔に傷があった。その障害により幼少期からずっと通院しており、手術も何回か経験している。
幼稚園児になる頃にはコンプレックスの塊で当時は認められなかったが、夢遊病や夜寝ていると地面に吸い込まれるような感覚を覚えたり、自分がコビトになったのかと思う程に、周辺の物が大きく見えたりと、精神的な病にかかっていたと思う。
幼稚園の階段を下りながら、はしゃいで遊び回る同級生を横目に『20歳になったら死のう』と思っていた。そして、その数日後には、自殺未遂を図っていた。性格が繊細で根暗の少年だった僕だったが、小学生に上がった際に初めて友人になったのが、マコトだった。
マコトは当時から体が大きく、一学年上のように見えた。性格も出会った頃から今と変わらず、面倒見の良いガキ大将であった。一見真逆の性格のような二人であったが、何故か馬が合い毎日一緒につるんでいた。マコトは今まで一度も俺の顔の傷について聞くことはなかった。
子供というものは、特にそこら辺でヤンチャしているような小学生は、思った事をすぐに口にする。『その傷どうしたの?』『変わった喋り方だね』と悪気もなく聞いてくる。
素直な疑問なんだろうけど、当時の僕にはその事を口にされるたびに傷ついていた。裏では父母から『あの子とは遊ばないように』と伝達されるような超問題児のマコトだったが、僕のそんな繊細な心を汲み取ってくれるような優しい男だった。
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