第4話 再会

あんなと初めて出会った翌日のことだった。


 僕は、久しぶりに会った高校時代の友人と夕飯を食べに行く予定があり、店前で友人と待ち合わせとある居酒屋へ向かった。

 居酒屋の席につき、昨日あんなの連絡先を聞けなかった事を少し引き吊りどんよりとした気分で、久々に会う友人と現在の進捗状況などを報告し合っていた。

その時だった。


『いらっしゃいませ』


 ふと見た店員さんを見て、僕は目を見開いた。オーダーを取りに来た店員さんが昨日から曇りづいた僕の感情の大元、あんなだったのだ。


僕が『昨日の、、』と恐る恐る聴くと

『え!?びっくりした、ゆうじさんですよね?』

『うん。あんなちゃんだったよね?』と僕は、脳内メモリーに完璧インプットした名前をわざとらしくうろ覚えのような言い方をしていた。


『ここでアルバイトしてるんだね。いやーなまらビックリしたよー!こんな偶然あるかい?』と少し照れながら友人に話を振ると事態を理解した友人が『いや、知ってたんじゃないの?笑』と冗談を言った。

 僕は焦ったように『いやいやいや、たまたまだって!』と全力で否定できず、中途半端に返した。


 更に『ほんとかー?だから、真っ先にこの店に入ったのかー』とありもしない事を冗談で言ってくるので、『いやいや、違うからね。ストーカーじゃないからね』とあんなに手を合わせ謝るような素振りをした。


 あんなもそんな僕達を見て笑ってくれていて、僕は有頂天になっていた。普段は割りと人見知りで大人しめの僕だったが、この時は良く顎が回っていた。


 僕はあんなと3回目のオーダーの際に連絡先を交換して店を後にした。『おっしゃー』と人目も気にせず、大きくガッツポーズを取ったことを覚えている。


 それから数日後、てつを含めてあんな達とこの前の夜の続きとして、居酒屋へ行った。またそれから数日後には、マコト達を含めたメンバーで遊園地へ遊びに行き、その数日後には海に行ったりと、あんなと出会ったあの夜からあんなと別れる日まで僕達は間髪入れずに遊んでいた。


恐らく、一週間空いた事なかったと記憶している。


 あんなは美容関係の専門学校に通う学生で、年齢は学年でいうと僕達の2つ下の18歳であった。

 片親で幼少期は父親が作った借金などから、色々と苦労をしてきた経験があり、いつも水筒代わりにペットボトルにお茶を入れて持ち歩くようなしっかりした一面がありながら、一方ではそれを笑いに変えて、周囲に気を使わせない気配りができた女性であった。そして、いつも明るく笑顔を絶やさなかった。


"いつかネイルサロンのお店を出したい"と夢を語り、一歩ずつではあるが、着実に夢に向かって歩いていた。


 少しひいき目で見ているのかもしれないが、確実に当時の僕には人間としても女性としても、とても魅力的だったし、自分自身も釣り合いのとれる男にならなければと身を引き締めていた。


 出会いから約1ヶ月経った頃に僕から告白をして、僕達は付き合うこととなった。付き合ってからは、更に拍車をかけ本当に毎日遊んでいた。

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