第3話 出逢い②
『こいつは、ゆうじ』
体が緊張でガチガチに固まる僕にてつが話を振った。僕は道端で恥ずかしい位、全力で格好つけた佇まいで『ゆうじです。よろしく』と簡単に自己紹介を済ませた。
僕が一目惚れをした女性はあんなという名前だった。『✕✕です』と名字で自己紹介するあんなを可愛いと思った。
あんなは、スラッとしたスタイルにギャル系のファッションをしていたが、よく笑う人当たりの良い女の子だった。
普通の女性では、大抵冷たい視線、良くて引きつった笑いが起きるようなテツのつまらない親父ギャグでも良く笑っていた。その笑顔を見つめる僕はデレデレと気持ちの悪い笑顔をしていた。
分かりやすい程に完全にドンピシャリだった。
てつも僕の態度に勘づいていたのであろう。気が変わる前にと全力で盛り上げてくれていて、これから行く先の話を進めてくれていた。
そんな時に昔から何かあるのが、僕である。やはり、嫌な予感が的中した。
「どこの組だコラっ!」ドスの利いた声が鳴り響いた。僕達のテリトリーに"VIP停め"をしている車に対し、その車のフロントバンパーに足をかけ、角刈りの男が怒鳴っていた。
頭のマコトだ。
僕達は暴走族ではないので、通常、総長だ、特攻隊長だ、親衛隊長だというような役職みたいなものは、必要なかったが、"暴走族上がりが多い"ということ"マコトが総長をやっていた"ということもあり、僕達は役職を作っていた。
そして、僕は特攻隊長という役割を任されていた。その役割は喧嘩や揉め事の際に発揮する。喧嘩になったら、いの一番に先頭に立ち、掛け合いをする。目の前に揉め事があれば、特攻の僕が無視する事はできなかった。
この時だけは、あの怖そうな角刈りを他人と思いたい。そもそも知り合いと思われたくないと、僕はあんなに対するイメージばかりを気にしていた。
僕は、小さくため息を尽き、後ろ髪を鷲掴みされたような気分で、小走りで現場に向かっていった。
『てつ!後は頼むぞ!最悪、番号だけでもゲットしてよ!』と心の声で叫んだ。『なるべく早く終わらせて、ご飯に行きたい!』心から懇願した。
僕が、マコトの所に駆け寄った時には、相手先の人間も車から降りていて、今にも取っ組み合いが始まりそうな緊迫した空気に落胆した。
結局、その場は多少の小競合いの上、最終的にケツモチ同士の話合いとなり、丸く治まっていた。
僕達みたいなチームは、場所代としてその筋の人達にみかじめ料(場所代)を支払い、ケツモチとしてトラブルの際には助けを借りることもあった。
その変わりというのか、偽物のブランドバックを売れと言われたり、誕生会に顔を出したり、タカられたりと面倒なことも多かった。
今は暴対法で元気な不良も少なくなっていると思うが、今も昔もその筋の人達と関係を持つこと自体がトラブルの元であることが、身に染みてわかった。
その理由はこの後、嫌というほど綴られていきます。
結局、この日は、僕達の揉め事に関与させる訳にもいかず、てつは、あんな達を帰し、連絡先交換も聞けず仕舞いで完結した。
しかし、その翌日、僕はあんなと運命的な再会をすることなった。
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