第2話 出逢い①

2003年5月



『ヴォンヴォン』とアクセルを空ぶかししながら、繁華街に鳴り響かせる爆音。どこからどうみても違法だとわかる程の改造を施した車の整列。アメリカのギャングを意識した、自分の2周りはあるようなサイズの服をダボダボに着た集団。


 飲み屋街やオフィスが建ち並ぶ繁華街の一角に、毎週土曜の夜、チーム看板をつけた改造車が集まり、集会を行っていた。


 それらのチームはそれぞれのテリトリーを持ち、看板を掲げていた。その一つチームに僕達も所属していて、テリトリーでは、「何をやっても許される」そんなよくわからない都合の良い法律を持ち、土曜日を特別な日として過ごしていた。



『ねぇ、ご飯行こう』『ちょっと時間ある?』

繁華街の人混みの中、手当たり次第声をかけては、フラレてを繰り返してる男がいた。


 この男はてつだ。大の車好きで、お調子者の詐欺師のような風貌で無類の女好きの男である。

 彼にとって、土曜日はある種の戦場で週末をどれだけエンジョイできるかは、ここに掛かっている。


 僕や仲間達も最初は呆れていたが、そのメンタル力と努力に負けたのか、そんなてつを見ることが土曜の一つの楽しみになっていた事は間違いなかった。


「ゆ~じ~飯行くべ~」

 人混みを掻き分けて、得意気な顔をしたてつが2人の女の子を連れて戻ってきた。


 てつは、女の子の手前ということもあり、いつもよりも気が大きくなり、おだった口調で僕を呼んだ。

 僕自身も最近彼女と別れたばかりであり、哀れに思われたように感じたので、暴言の一つでも言おうと僕は顔をあげた。


『ん!?』


 ロングの栗色の髪に、小さく整ったフェイスライン、パッチリとしたビー玉みたいな綺麗な瞳。一瞬、時が止まるほど、見事な一目惚れだった。


僕は呆然としながら、小さく頷いた。

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