第2話 「有馬記念回顧 」運を味方に付けなくては…

 有馬記念の結果


 ステラヴェローチェは、菊花賞に続き4着止まりに終わった。


 有馬の覇者は、同じ3歳牡馬で秋の天皇賞の覇者であるエフフォーリアであった。


 これでステラヴェローチェはエフフォーリアに4戦4敗となり、確固たる力関係を築かれてしまった。


 勝負は、一瞬の運


 2021年12月26日午後3時28分頃、中山競馬場11レース、第4コーナを先団の一角として5枠の黄帽子2頭が駆け抜けた。


 ステラヴェローチェのミルコ・デムーロは勝機を確信したかのようにステラを大外に振り、中山の直線、急坂の向こうに隠れるゴールに向かって加速した。


 最後の直線勝負


 これが、現行、ステラヴェローチェの最善の勝負策だった。


 弾ける加速


 他の馬と脚色が違っていた。


 駆け抜ける!と思った瞬間、


 エフフォーリアの鞍上、横山武も勝機の進路を外に見出し、馬体を大きく外に振った。


 加速するステラはエフの併せに怯み、一瞬、加速を弱めた。


 一方、エフフォーリアはぐんぐんと加速する。


 怯み、ギアを落としたステラは伸びない。


 どんどんエフとの差は開く。加速の差だ!


 エフは他馬に影を踏ますことなくゴールを突き抜ける。


 ステラは喘ぐように食い下がろうとし、鼻先を懸命に伸ばすもののクロノジェネシスにも交わされ、先行3頭の後塵に散った。


 一瞬の進路変更


 偶然の併せ


 動き出しのタイミング


 先週の朝日杯でも最後の直線勝負で他馬の併せに怯んだミルコ・デムーロ、この時は後ろ過ぎた。 その分、不利を受ける可能性は多分にあった。


 今日はその経験を活かし、4コーナ先団の一角に付け、絶好の位置取りからスムーズに外に出し、先団に付けた少数精鋭の他馬から、末脚の加速力を見せつけ、抜け出すだけであった。


 同じ技量、同じ加速度、同じ作戦


 エフフォーリアも得意の先団抜け出しを狙っていた。


 その外振りのタイミング、時間差、これが運命、勝機の分かれ道となった。


 競馬にタラレバは無い。


 力関係以外にあるとすれば、それは運だ。


 「運が無かった。」


 この言葉が通用するのが、競馬の世界である。


 そう、ステラは運を味方に付けることが出来なかったのだ。


 方や、勝者エフフォーリアには「運」という要因は、全く当て嵌まらないかのような圧勝劇!


 勝者の結果は、全てが実力として歴史にその映像を刻み込む。


 脚光の当たる世界、歴史から見捨てられたステラヴェローチェ…


 敗者の結果は、忘れ去られた存在となり、まるで深淵から暗黒の底に滑り落ちた残骸となる。


 残念な馬


 そう呼ばれるには、まだまだ若い。


 お前の舞台は凱旋門だ!


 不運は有馬中山に落としておけ!


 あの2021年12月26日午後3時28分頃、中山競馬場11レース、第4コーナを周り終わった先団の一角


 未知なる強豪となる一瞬の輝きを確かに見た!


 ステラヴェローチェ


 お前には、幸運に満ちた宝塚記念が待っている。


 そして、勝って、凱旋門に乗り込め!


 ゴー、ジャスタウェイ!

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