競馬は歴史のリピーター

ジョン・グレイディー

第1話 有馬の王者は凱旋門の覇者となる。

 競馬は過去の蓄積である。


 何故ならば、競走馬は、血の流れを重んじ、一流血統の素質を引き継ぐからだ。


 競馬場も歴史を重んじ、その個性あるコース形態を維持する。


 そして、一流レースも、その感動の歴史を繰り返すのだ。


 日本のビックレースである有馬記念。

 その年の最後のビックレースであり、その勝者は歴史に名を残している。

 近年ではディープインパクト、オルフェーブル、ゴールドシップ、ゴールドアクター、キタサンブラックの錚々たる王者達である。


 有馬記念の活躍馬は、リピート性が非常に強く、ファンの期待に応える圧勝、又は復活劇を演出してくれる。


 その反面、有馬の主役に衰えが見え始めると、束の間、紛れが生じるレースでもある。


 近いところでは、キタサンブラック引退後の2018年、2019年の2年間、ブラストワンピース、リスグラシューが一時的に台座した。


 この沈黙を破り、2020年の有馬にクロノジェネシスが新女王として登場し、圧勝を遂げた。


 そして、新女王クロノジェネシスは、今年の有馬に連覇を挑むのがファンのシナリオである。


 しかし、クロノジェネシスは牝馬であり、歴史的な有馬の王者である牡馬ではない。


 歴史は物語る。


 有馬に牝馬の連覇なく、あのウオッカもブエナビスタにもその偉業はない。

 そう、晩成牝馬に活躍の光が当たる期間は牡馬よりも短いのだ。


 クロノジェネシス


 この馬にとって、2021年の有馬記念がラストランである。


 牝馬のラストラン


 ウオッカ、ブエナビスタともラストランは無事を第一に激走は控える形となっている。


 何故ならば、一流牝馬は5歳で繁殖牝馬への価値が高騰する。

 有馬記念の3億円の賞金など微塵たるものなのだ。


 一方、記憶に新しいアーモンドアイのジャパンカップでのラストランがある。


 アーモンドアイは、見事勝利し、有馬記念と同じ3億円の賞金を獲得した。そして、無事にレースを終え、繁殖入りを果たしている。


 クロノジェネシスもアーモンドアイに引けを取らない名牝馬であることは間違いない。


 ファンの期待どおり、宝塚、有馬記念4連覇の偉業を達成してでのラストランも演出がより良く映る。


 しかし、クロノジェネシス自体に課せられていた真の目標は何だったのか?


 そう、日本馬初の凱旋門賞を勝つことが、この馬の命題であったのではないか。


 凱旋門馬バコを父に持ち、宝塚記念と有馬記念といったタフな競馬を三連覇したクロノジェネシスにとって、2021年10月3日、凱旋門賞こそ、真のラストランではなかったのか。


 その結果は凱旋門賞の壁に押し返された。


 そこで、ファンは都合良く、ラストランを方向転換し、宝塚・有馬の4連覇をフィナーレに設定した。


 もう一度言う。クロノジェネシスは女王であり牝馬である。


 牝馬は、牡馬以上に身体を消耗するし、今後の繁殖活動に支障を来す激走には関係者は首を縦には振らない。


 そこでだ、2021有馬記念のクロノジェネシスの取り扱いである。

 

 地力はある。


 馬券内には来そうだ。


 その条件として新救世主がいないならばであるが…


 有馬の王者オルフェーブルの後継者にはゴールドシップが居た。

 ゴールドアクターとキタサンブラックも凌ぎを削り有馬を魅力した。


 そう、有馬のリピート性、歴史の繰り返しについて、ここで注視する必要がある。


 昨年の活躍馬で今年出走するのはクロノジェネシスのみである。


 ならば、今年の出走馬に有馬の王者になるべく新救世主は居るのか?


 王者の後継者


 サインは凱旋門賞だ。


 日本競馬の目標は、悲願の凱旋門賞を勝ち切る馬を出現することにある。


 2021年12月26日中山競馬場11レースの勝馬が来年の凱旋門賞の悲願を叶える。


 その資格を持った馬が居るか居ないか。

 居なければ、今年の有馬記念は紛れのレースとなるが…、どうにか居るように思える。


 ステラヴェローチェ


 クロノジェネシスと同じ凱旋門賞馬バコを父に持つ3歳牡馬。

 皐月賞、ダービーとも3着、菊花賞は4着ではあるが、

これら戦績は有馬記念出走を得るための備考に過ぎない。


 競馬は歴史、競走馬は血統、そして、必ず進化を遂げる。


 ステラヴェローチェが新救世主に見える。


 よって、今年の有馬は紛れはない。


 ついては、クロノジェネシスよ、安心して、ラストランを無事に走り終えてくれ。馬券内など無理するな!

 お前の後継者は見つかったよ!


 新王者ステラヴェローチェ!


 その勝者の輝きの両脇には、天皇賞の覇者エフフォーリアとエリザベスの覇者アカイイトを従える。


 来年の凱旋門賞馬に相応しく…

 

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