第3話

「毎年この時期は出かけてるんだ。ねえ、サンタさんっていると思う?」

 毎年? この少年は、毎年ひとりぼっちのクリスマスを送ってきたのだろうか。

「サンタさんはいるぞ」

 子どもの夢を壊してはいけないとの思いもあるが、嘘じゃない。こういった気持ちがサンタという存在を創り出しただろうから。

「やっぱりいるよね」

 少年は少し嬉しそうに微笑む。

「僕ね、サンタさんになりたいんだ」

 また壮大な夢だ。しかし笑う気にはなれない。

「でも、おじいちゃんになりたいと言っても、『お前には資格がない』て言われちゃう。サンタさんになる資格ってなんなの?」

 知るか、そんなもん。あー、でもフィンランドかどっかにサンタの資格どうのこうのってあったっけ。いや、そんな話じゃないだろう。もしかして、そんなこと聞くために声かけて来たんだろうか。

「なんだろうな。今度サンタさんにプレゼントでお願いしてみたらどうだ?」

「うん、そうだね。でも、プレゼントお願いしたことないから、もらったことないんだ」

 ああ、またやってしまったか。プレゼントも貰えない家庭か。なんだ。ちょっとした怒りみたいなものも感じる。ああ、そうだ。そう言えば。

「そういえば、ここに来る途中、サンタさんからプレゼント預かってきたぞ」

 そう言って、先ほど買ったケーキを少年に見せる。サンタの店員さんから買ったから嘘ではないだろう。都合よくラッピングもされているし。

「わ!ケーキだ。ほんとに!」

 少年は、目を輝かせながらケーキと自分を見比べる。

「ありがとう!」

 せっかく買ったケーキだが、悪くない。どうせ家に帰っても、テレビでも見ながら食べるだけだろうし。

 その時、少年に渡したケーキが淡い光を放った。

「…なんかサンタの資格を得たみたい。そういえば、おじいちゃんが言ってた。プレゼントを貰った時の気持ちがわからないと、渡し続けることはできないって」

 なんだそれ。おじいちゃんって…。

「僕、おじいちゃんの手伝いしてくるね!」

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