エクストラ4【雨宮ひかりの過去】


【3年前 とある商店街】


「お兄ちゃーん! 今日の夕ご飯は何にする?」


「そうだな。豚の角煮とかどうだ?」


「いいねいいねぇ! だいさんせーいっ!」


 商店街を2人の男女が歩いている。

 とても仲睦まじく、腕まで組んだりして。

 でも、2人は恋人同士ではなく、兄と妹のようだ。

 

「じゃあ、肉屋さんに寄って帰らないとな」


「ほーい! じゃあ、どっちが先に到着するか競争だー!」


「おいおい、走ると危ないぞ。結構、人の流れがあるからな」


「大丈夫だってー……わわっ!」


 走り出した妹の方が、バランスを崩して転びそうになる。

 その体が、前を歩いていた1人の少女に当たりそうになったのだが。


「あっぶな! 間一髪だったぞ!」


 ギリギリのところで、お兄さんが妹の腕を掴んだお陰で、接触は避けられた。


「すみません、うちの妹が」


「い、いえ……」


 お兄さんはぶつかりそうになった少女に頭を下げると、後ろの妹をぐいっと自分の傍へと引き寄せます。


「ほら、行くぞ。もうこの手は離さないからな」


「やーん! お兄ちゃんのけだものー!」


 そうして、お兄さんは妹を連れてお肉屋さんへと向かったのでした。

 めでたしめでたし。



















































「……好き」

















「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き」























 商店街で、お兄さんと一瞬だけ目が合った少女。

 彼女は恋に落ちました。

 そして彼女は気付きました。

 そう言えば、あの男性とは前世で結ばれた恋人同士であったと。

 あの再会は運命。

 何千年、何万年も前から決められていた……愛の物語の1ページなのだと。


「お兄さん、お兄さん……ああ、この世界でのお名前はなんていうのかしら?」


 少女は長く垂れ下がった黒髪を、ハサミで切る。

 これまでは周囲の目など一度も気にしていなかったから、ずっとボサボサに伸ばし続けていた髪を綺麗に整えると……そこには、美しい少女の顔が存在する。


「ようやく、巡り会えた運命の人。お兄さん、大好き。愛しています。ああ、そんな……お兄さんも私の事を? ふふっ、言わなくても分かっていますよ」


 鏡に向かって、少女は語りかける。

 そこに映る自分の瞳。そこに焼き付いたあの少年の姿を思い浮かべながら、少女は愛の言葉を囁き続ける。


「もっと、彼の事を知らなくちゃ……あはっ」


 そして彼女は、引き出しの中から幾つもの道具を取り出す。

 盗聴器。隠しカメラ。全て、こんな日の為に用意していたもの。


「……すぐに突き止めてあげますからね、お兄さん♪」


 これが、雨宮ひかりという少女が、晴波大和を愛するまでの軌跡である。

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