第24話:なぁにぃ!? ヤっちまったなぁ!
なんだろう? 頭がガンガンする。
それに……妙に胸が気持ち悪い。
「……っ!」
激しく痛む頭を抱えながら、俺は上体を起こす。
ここは……ベッドの上?
俺は、眠っていたのか?
「いてて……」
確か俺は、マドカさんと一緒に料理を作って。
それで、きらら以外のみんなとご飯を食べて……途中でワインを飲んで、マドカさんがすげぇ酔い方をしてしまった。
そこから俺もワインを大量に飲まされ……むにゅっ
「……むにゅ?」
なんだ、今俺の右手に当たっている感触は?
暖かくて、柔らかい……人肌のような感触。
「……」
視線を。
ゆっくりと。
下の方へと向けていく。
すると、そこには――
「むにゃぁ……お兄ちゃん……」
「!?!?!?!?!?!?」
俺の隣で眠っているのは、可愛い妹のきらら。
それもなぜか、全裸である。
「なっ、なぁっ……!?」
しかも俺の右手はきららの胸を鷲掴みにしている状況。
こ、これは非常にマズイ!
「うぉわぁっ!?」
俺は慌ててきららの胸から手を離すと、ベッドから飛び起きる。
そして、もう一度落ち着いてベッドを見渡して……気付く。
「んぅ……お兄さん……」
「あにきぃ……はげしすぎるってぇ……」
「じどうぽるの……どんとこいですわぁ……」
「……嘘だろ?」
豪華過ぎる巨大ベッドの上には、きららの他に……ひかりさん、しのぶ、カレンちゃんが寝言を呟きながら眠っている。
それも全員、素っ裸の状態で。
「あ、ぁ……っ!」
そして気付く。俺も裸だ。
パンツ1枚すら、身に纏っていない。
「……」
理解が追いつかない。
なぜ俺は、全裸のきらら達と一緒のベッドで眠っていた?
どうして……? いや、まさかそんなわけはない。
俺が、俺が酔った勢いで――彼女達を?
「大和君。いますかー?」
「!?!?!?!?!?!?」
コンコンコン。
部屋の扉がノックされ、廊下の方からマドカさんの声が聞こえてくる。
「あ、その声。やっぱりここにいたんですね」
「マ、マママ、マドカさん!?」
「私、どうやら飲みすぎて酔い潰れていたみたいで……今さっき、リビングで目を覚ましたんです。そうしたら、みんなの姿が見えなくて……いたたっ、頭が痛みますね」
扉越しに、マドカさんはそんな言葉を口にしている。
良かった。どうやら彼女に、俺の毒牙は及ばなかったようで……って、別にきらら達に対しても俺は手を出してなんかいないって!
「大和君、そこにカレンお嬢様達もいらっしゃるんですか?」
「あ、いや……その」
「どうかしたんですか? とりあえず、入りますよ?」
「ダ、ダメです! 入らないでください!」
「え?」
いかん。もし、もしもこんな場面をマドカさんに見られでもしたら。
まず確実に誤解されてしまうに決まっている。
「……どうしてダメなんですか?」
「いや、その……今、着替えている途中で! 服を着ていないんです!」
「そんな事ですか? 私達はこ、恋人同士……なんですから。それくらい、気にしないでください」
どこか照れたような声色で、扉を開こうとするマドカさん。
ヤバい。俺は全力ダッシュで扉を塞ぎに掛かる。
「きゃっ!? 何をするんですか!?」
「すみません。でも……」
落ち着け。考えろ。俺が変態扱いされるのは構わないが、それによってマドカさんが傷付く事だけは避けたい。
まずはこの場を乗り切り、後で落ち着いた状況でマドカさんに、今回の事情を説明するんだ。そうすればきっと、彼女は分かってくれる。
「……何か、事情があるんですね」
「え、ええ。それについては、後でじっくりと説明します」
「分かりました。私も、大和君の嫌がる事なんてしたくありませんから」
扉に掛かっていた力が、だんだんと弱まっていく。
どうやら、マドカさんは引き下がってくれたらしい。
「だけど、これだけは覚えておいてくださいね。私は何があろうと、大和君の事を愛していますから」
「っ!?」
「うふふっ、なーんて。それじゃあ、私は朝食の準備をしてきますね」
「う、うぉぁ……!」
苦しい。なんという、なんという罪悪感だ。
確かに、俺とマドカさんは正式に付き合っているわけではない。
だとしても、こうして彼女に隠し事をするのは――胸が張り裂けそうだった。
「……落ち着け、慌てても事態は好転しない。とりあえず、現状を正確に把握するんだ」
俺はまず、近くに脱ぎ捨ててあった自分の衣服を着る。
そして、目のやり場に困る……眠ったままの少女達に布団を被せた。
「冷静に考えて、童貞の俺が一気に四人もの少女……それも妹込みでヤらかすなんて、いくら酔っていてもありえない」
そうだ。それに、もしもそれだけハッスルしたとなれば、そういう匂いとかが部屋に充満していそうなものだが。
そういった形跡も無い。
「……ん?」
あれ? なんだろう、シーツの中央辺りに付いた小さな赤いシミ。
うわぁ……まるで、血痕みたいだぁ。
「いや、いやいやいや。違う違う。そんなわけがない」
俺はすぐに、ベッドの脇にあるゴミ箱を見る。
これを見れば、アレの痕跡が残っているかどうか……
「……え?」
ゴミ箱の中から出てきたのは、中に白濁の液体が入ったコンドーム。
しっかりと結ばれ、投げ捨てるようにゴミ箱の一番上に置かれていた。
「……え?」
今、この島において……これを使用出来る者は俺しかいない。
そして、ベッドの上の赤いシミ。
使用済みのコンドーム。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
俺は走った。ただ、ひたすらに――現実から目を背けるように。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
別荘を飛び出し、ビーチの方へと駆けていき、そして海へと飛び込む。
「がぼぼぼぼぼばばばばばばばぼあばっ!?」
海水が、鼻から、口から、体の中に入り込んでくる。
それでも、俺は叫ぶのをやめられなかった。
認めたくなかった。俺が、俺が、こんな過ちを犯してしまったなんて。
【ベッドの上】
「予想以上のダメージだったわね」
「なんだか、可哀想だよなぁ」
「お兄様を苦しめるなんて、泣いちゃいそうですの」
俺が部屋を飛び出した後、ひょっこりと起き上がったひかりさん、しのぶ、カレンちゃん。彼女達はそれぞれ顔を合わせ、深い溜息を漏らす。
「きららが道を踏み外すよりは、マシだと思うしかないわ。これでお兄さんはもう、マドカさんとの関係を解消するでしょうし」
「本当にそうなるのか? その前に、自殺しかねない勢いだったけど」
「お兄さんがきららを残して死ぬなんて、100億%あり得ない。それに、責任感の強いお兄さんなら……自分を責めて、マドカさんを突き放そうとする筈よ」
「でも、それでマドカが失恋するのは可哀想ですわ。ワタクシはあの子も、一緒にお兄様と結ばれたいんですの」
「それは……今後次第ね。私も応援してあげたいけど、きららを経由せずにお兄さんを手に入れる事は絶対に不可能だもの」
「今のアタシ達だって、兄貴が好きだってきららにバレたら……どうなるか分からないもんな」
「お兄様に近付くには、きららとの関係を深めるしかない。きららに認められれば、お兄様の傍のずっといられる」
「そういう事。勿論、私達は全員……お兄さんだけじゃなく、きららの事も大好きなんだけどね」
微笑みながら、ひかりさんは眠っているきららの頬を撫でる。
ほんの数時間前まで、悪鬼のような顔をしていたきららだが、今では憑き物が取れたように安らかな表情だ。
「さて、今の内にインクの染みや片栗粉入りのゴムを片付けるわよ」
「いいのか? 折角、既成事実を偽装できたのに」
「ええ。こんなやり方でお兄さんを追い詰めたくないもの」
「あくまでも、お兄様からワタクシ達を求めてくれるようにならないと……」
「でも、その日はそう遠くないかもしれないわ」
「え? どうしてそう思うんだ?」
「ふふふっ、だって……さっき、きららの裸を見た時のお兄さん。あんなにも、アソコを大きくしていたんですもの」
きららの理想の兄として。きららを幸せへと導く立派な兄として。
胸の奥に閉じ込め、決して表には出してこなかった――妹への欲情。
鉄壁の理性に亀裂が入った今、それが崩壊するのも時間の問題。
それを確信し、彼女達は嗤う。
愛しい彼女であるきららと共に、俺と結ばれるその日を夢に見て。
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