第23話:酔って、酔わせて、ヤられちゃうの?
「さぁ、皆様。夕食が出来たましたよ。
「美味しいカレーが出来たから、楽しみに……って、あれ?」
俺とマドカさんで作った料理を別荘のリビングへと運ぶ。
すると、テーブルに座っているのはひかりさんとしのぶ、カレンちゃんの3人だけで、いつの間にかきららの姿が無くなっていた。
「きららはどこへ行ったんだ?」
「きららったら、ちょっと疲れちゃったみたいで。寝ちゃったんです」
「部屋に運んでおいたから、安心してよ」
「……そうか」
夕食でも食べながら、きららの様子を見たかったんだけどな。
「まぁ、美味しそうな匂いがしますの! くんくん……マドカのカレーですわね?」
「はい、カレンお嬢様。ですが、私のカレーではありませんよ?」
「え?」
「私と大和君の……初めての共同作業ですから」
そう言って、俺の腕に絡みついてくるマドカさん。
ああ、またしてもおっぱいが……おっぱいが!
「「「……」」」
バリンッというガラスが割れるような音が、一気に三箇所から聞こえる。
見ると、ひかりさん達の手に持っているガラスコップの全てに、大きなひび割れが入っていた。
「わっ!? 大丈夫!?」
「あら、大変。なんだか脆いコップねぇ」
「安物ってわけじゃなさそうなのに、変だなぁ」
「……マドカ、すぐに替えのコップを」
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」
カレンちゃんの指示で、マドカさんはひび割れたコップを全て回収。
すぐに新しいコップを持ってきてくれた。
「さぁ、頂きましょう。あ、マドカさんもご一緒にどうかしら?」
「え? ですが私はメイドですので……」
「構いませんわ。食事はみんなで食べた方が美味しいですもの。それに、お兄様だってマドカと一緒に食べたいですわよね?」
「ああ、勿論。マドカさん、一緒に食べましょう」
「……ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
そう答えて、マドカさんは俺の隣の席に座る。
そしてそれを確認してから、俺達は一斉に手を合わせる。
「「「「「いっただっきまーす」」」」」
ちゃんと食前の挨拶も済ませ、俺達はスプーンを手に取ってカレーを食べようとする。
だが、俺がカレーをスプーンで掬うよりも先に、スッと眼の前に……横からスプーンが差し出される。
「はい、大和君」
横を見ると、マドカさんがカレーを掬ったスプーンを俺の方へ差し出していた。
どうやら、これは――
「マ、マドカさん?」
「あーん、してくださいね?」
「いや、でも……」
「……私にされるのは、嫌ですか?」
「あーん!」
「はい♪」
ぱくり。う、うまいっ! なんという旨さだ!
「もぐもぐ、ごっくん。美味しいです」
「ふふっ、口に付いちゃいましたね。ほら、フキフキしてあげます」
「そ、それくらいは自分でやりますから!」
「いいんです。私は彼女なんですから、これくらいさせてくださいね」
「……はい」
まるで母親が小さな子供に接するかのように、マドカさんは俺を甘やかしてくる。
いや、嬉しいは嬉しいんだけどさ。
流石に目の前に、ひかりさん達がいるわけで……
「……ホントウニオイシイワネー」
「アタシモカレーハトクイダヨ。オマエラモタベタコトナイッケ?」
「アラ、シノブガリョウリシタコトナンテアッタカシラ?」
「ワタシハタベタコトナイワネ」
「ヒカリガナカッタラ、ダレモタベタコトナインジャナクテ?」
「コラ! アタシダッテツクルトキハアルゼー!」
以外な事に、彼女達はこちらをまるで気にする様子もなく。
満面の笑みで談笑しあっていた。
妙に棒読み気味なのは気になったけど。
「こぉーら、大和君。よそ見しちゃダメですよ?」
「うぇ!?」
「今度は、私にも食べさせてくださいね?」
「……俺が、マドカさんに?」
「あーん……」
マドカさんは瞳を閉じてから口を開き、俺にあーんを催促する。
か、かわええ……! こんなの、いくらでもあーんしてやりますとも!
「あ、あーん」
「あー……むっ。もぐもぐ……ごっくん。あはっ、美味しいです」
「よ、良かった」
今まで、きららに対しては何度もこういう事をしたけど。
歳上の、それも美人な彼女に対して……こんな事をする日が来るなんて。
「(マドカったら、初めての彼氏でウキウキですわね)」
「(やべぇ。アタシもダークサイドに堕ちそうなんだけど)」
「(そうね。これ以上見ているのもキツイし、そろそろ作戦開始ね)」
俺がすっかりデレデレしている裏で、ひかりさん達がシュバババッと高速で手話を使って会話をしている。
無論、マドカさんに夢中な俺は何も気付かないわけだが。
「じゃあ次は私の番ですね……」
「ねぇ、マドカさん。少しいいかしら」
「はい? なんでしょうか?」
「今日はお兄さんとマドカさんが付き合った記念日なんですもの。どうせなら、もう少し派手にお祝いしてもいいと思うんです」
「派手にお祝い、ですか?」
マドカさんが俺にあーんをしようとしたタイミングで。
唐突にひかりさんが、そんな事を切り出した。
「そうだな。兄貴もマドカさんも大人なんだし、どうせならワインとかで乾杯した方がいいんじゃないか?」
「ワイン……私、あまり飲んだ事がないのですが」
「ああ、俺も普段はお酒を飲まないからな」
「こういうのは気分ですよ、気分。私達に遠慮なさらず、ぐいーっと」
「あら、こんなところに50年物のロマネ・コンティがありますわ!」
そう言って、カレンちゃんがふところからワインボトルを取り出す。
いや、50年物って……相当高いんじゃ?
「カレンお嬢様。それは旦那様が楽しみになさっていたワインでは?」
「いいんですのよ。お父様もきっと、マドカをお祝いしてくれますわ」
「ほら、グラス用意したぞー」
「はい。じゃあ私が栓を抜くわね」
素早くワイングラスを持ってくるしのぶと、コルク抜きを使ってきゅぽーんっと栓を引っこ抜くひかりさん。
ああ、もうこれで飲まないわけにはいかなくなってしまった。
「仕方ありませんね。でも、カレンお嬢様達のお気持ちは嬉しいですね」
「ええ。では……乾杯しましょうか」
実はこれが、恋人(仮)だと知られた時が怖いけど。
今はとりあえず、マドカさんとの関係をお祝いしておくとしよう。
「俺とマドカさんが、お付き合いをした記念に」
「はい。私が大和君を好きになった記念すべき日に」
「「かんぱーい」」
キンッとグラスを鳴らして、俺達はワインを口につける。
本当はグラスを揺らし、匂いを嗅ぐとか、すぐには飲み込まずに口に含んでどうこうするとかあるんだろうけど……そんな細かい事は無粋というものだ。
「ぷはっ、何だこれ? 今まで飲んだワインとは、全然違うな」
俺が成人になったのがつい最近。
それから友人達と飲みに行って、色んなお酒にチャレンジしてみたのだが。
こんなにも味が濃厚なワインは初めてだ。
「美味しいですか? お兄さん」
「うーん。正直良く分かんないけど、悪酔いはしなそうかな。なんだか、胸がポカポカしてきたし。マドカさんはどうですか?」
俺よりも一つ歳上だというマドカさんに、ワインの感想を聞こうと思って、俺が横を向いた瞬間だった。
「ヒック……」
「ん?」
「なんらぁ、このわいん……めちゃくちゃうめぇじゃねぇかよぉー! うぃっく!」
「……え?」
突然、俺の隣に座っていたマドカさんが大声で叫びながら、両手を突き上げてガッツポーズをする。
そのあまりの豹変ぶりに、俺は思わず面食らってしまった。
「おーおー、かねもちはやっぱちげぇなぁ! いいもんのんでやがる! なぁ、やまと! おめぇもびっくりしただろぉ?」
「あっ。え?」
目は焦点が定まっておらず、とろーんとしていて。
顔はゆでダコのように真っ赤。呂律は回っていない。
あれ? これ完全に、酔っ払っていらっしゃいます?
「あらあら、マドカさんったらお酒に弱かったのね(棒)」
「へぇー。知らなかったなぁ(棒)」
「びっくり仰天ですわねー(棒)」
いやいやいや、弱いとかそういうレベルじゃないでしょ!
まだ一口しか飲んでないんだけど!?
「ぶへはははははっ! こんなたけぇもん、もうにどとのめねぇかもしんねぇぞ! やまとぉ、いっぱいのんどけよぉ」
「いや、そんな……」
「んもぉー! そこは、おれがしっかりかせいでやるって、たんかきるところだろぉー! わたしとけっこんしゅるんなら、それくらいいえよぉー!」
「うごっ!?
マドカさんは俺の首に腕を回すと、そのまま自分の方へと引き寄せる。
そして、ロマネ・コンティのボトルをまるで一升瓶のように掴むと……それを俺の口元に押し付けてきた。
「のめぇー! のんじまえー! もっとのんで、わたしのことをしあわせにしゅるっていえー!」
「むごごごごっ!?」
どぷどぷどぷっと、口の中に注ぎ込まれるワイン。
い、いかん。これはもう無理だ。吐き出すしかない!
「ねぇ、カレン。あのワインって一本いくら?」
「そうですわねぇ。100万はくだらないと思いますけど」
「!?」
そ、そんなものを吐き出すわけにはいかない。
俺は喉まで唇をぎゅっと引き締め、注ぎ込まれるワインを全て飲み干していく。
「きゃーっ! いいのみっぷり! さすがはわたしのだぁーりん! だいしゅきー! ちゅっ!」
「ぶもももも……!」
頬にキスをするマドカさん。その感触は気持ちいのだが、一気にワインを飲んだ俺の気分は一気に悪くなっていく。
「お兄さん、大丈夫ですか?」
「う、うーん……?」
「ほら、オレンジジュースをどうぞ」
「あ、ありがとう。あれ? これもお酒の匂いがするような……」
「気のせいでしょ。スクリュードライバーなんて、アタシ達が作れるわけないし」
「そうですわ。ささ、ぐびーっと!」
「ごくごくごくごく」
ああ、オレンジジュース美味しいなぁ、
なんか、飲めば飲むほど視界がぐにゃぐにゃになっていくけど。
「……はへ? ほにゃ……」
おかしいな。なんだか眠気も襲ってきたぞ。
このままじゃ、俺……
「ぐぅー……すぴぃー」
「フフフ……おやすみなさい、お兄さん」
「可愛い寝顔だなぁ、兄貴」
「ああ、このまま地下室に監禁してしまいたいくらいですわ」
「はへぇ? なんらやまとぉ、もう寝ちまったのかよぉ! わたしをおいてねるんじゃねーよー! ばぁーかぁー!」
俺がダウンした後、マドカさんは相変わらずハッスルしていたようだが。
すぐに、体力の限界を迎えたらしく。
「むぅ……ふわぁぁぁぁ……なんだか、わたしも、ねむく……やまとといっしょに、ぐっすり、しゅるぅ……むにゃぁ」
俺の上に覆いかぶさるようにして、マドカさんは眠ってしまう。
こうして、大人二人はあっという間に酔いつぶれてしまった。
「……さて、これからが計画のスタートよ」
「よっしゃ! 待ってたぜ!」
「あぁ、なんだか少し照れてしまいますわ」
俺とマドカさんがダウンしたのを確認した3人は立ち上がると、身に纏っている服や下着を全て脱いで……産まれたままの姿となる。
そして、倒れている俺を全員で抱えると……
「お兄さん。アナタがマドカさんと付き合った事、少し怒っているんですよ?」
「だから、これから兄貴にとんでもない目覚めをプレゼントしてやるからさ」
「ふふっ、楽しみにしてくださいまし」
裸の少女達が、俺をベッドのある部屋へと運んでいく。
その中には既に、衣服を脱がされて眠っているきららの姿があった。
「うふふふっ。ようこそ、お兄さん。私達の愛の巣へ」
これこそが、恐るべき計画。
そして、この先ずっと俺を苦しめる……呪縛の始まりであった。
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