第6話 廻間麗奈①

<自宅>


「おはよう結依姉さん」


「んー。おはよー」


 学校に行く準備をしていると結衣姉さんがリビングにやってきた。目を擦りながらそのまま席に座る結依姉さん。


「パンはもう焼いてあるから食べても大丈夫だよ。あとジャムとかは冷蔵庫に入っているから、好きなの使ってね」


「ん。ありがとー」


 結依姉さんが欠伸をしながらご飯を食べ始める。とても眠たそうだ。


「今日も早いねー。高校生は」


 大学生の結依姉さんは本当ならもっと遅くに起きても大丈夫なのだが、学校に行く僕を見送りたいといつもこの時間に起きてくれる。


「うん。もう行くね。いってきます」


「いってらっしゃい。気をつけてねー」


 結依姉さんに見送られ、家を出発する。


「千尋、おはよー」


 登校中、後ろから元気の良い挨拶をされる。


「おはよう桜佐さん」


 声の主は幼馴染みの桜佐さんだった。

 家が近く、小さい頃から遊んでいた。高校生になった今でも仲良くて、桜佐さんはモデルのお仕事をしていて忙しいが、たまに遊んだりもしている。


「千尋、今日提出の宿題やった?」


「うん。難しかったけど」


「あれ難しかったよね。絶対嫌がらせだよ」


「おーい咲ーっ! 早く行こー」


 何メートルか先の方から桜佐さんの友達が手を振って桜佐さんを呼んでいる。


「うん今行くっ! じゃあ私先に行くから、また教室でね!」


 笑顔でこう言うと、桜佐さんは友達のところに走っていった。


「おはよう千尋くん」


 桜佐さんがいなくなって数分後、再び背後から声を掛けられる。


「お、おはようございます廻間先輩」


 振り返って確認すると廻間先輩が綺麗な黒髪をなびかせながら立っていた。

 僕の一つ上の廻間先輩は容姿端麗、頭脳明晰の完璧な女性だ。おまけに剣道部のエースで多くの大会で優勝をしている。

 欠点が見当たらない、学校中の生徒から尊敬されていて、僕の憧れの先輩だ。


「最近調子はどうだい?」


「調子は……普通です。先輩は?」


「私も普通だよ。部活も勉強も普通にいつも通りだ」


 廻間先輩の言う普通は勉強だと学年上位、部活でも大会で大活躍なので、僕からしたら普通じゃない。


「先輩、頑張りすぎないでくださいね」


「ははっ。心配してくれているのかい?」


 廻間先輩はいつ休んでいるのだろうと思うくらい努力をしている。大丈夫大丈夫と言っているが倒れてしまわないか心配だ。


「そうやって言ってくれるのは千尋くんだけだよ。ありがとう」


 廻間先輩の笑顔に顔が少し熱くなる。


「麗奈」


「ああ。仁、おはよう」


 声をかけたのは廻間先輩と同学年の宮町仁先輩。

 廻間先輩同様に成績優秀で容姿も良いので、女子生徒からの人気も高い。

 生徒会のメンバーでもあって廻間先輩と仲が良く、宮町先輩が猛アプローチ中だと噂が流れている。


「千尋くん、またね」


「はい」


 廻間先輩と仲良くなったのは入学してから1か月ほど経ったときだった。

 僕が渡り廊下で転んだ時に廻間先輩が助けてくれたのが最初の出会いで、そこから仲良くさせていただいている。

 初めて会ったとき、とても綺麗で凛とした人という印象が強く残っている。それは今も変わらない。


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