2. 皇女様の救出(12月24日18時)
「ちくしょう、僕を仲間にしてくれるところはないのか」
僕は今、公園のベンチに座っている。
あれから僕は、すぐに新しいギルドを探し始めた。
通常冒険者ギルドを辞めて次のギルドに行くときには元居たギルドの推薦状が必要となる。
しかし追放された僕はそんなもの持ってはいない。
なので当然、
「なんで推薦状がねぇんだ? 追放された? そんな問題児はいらねぇよ、帰った帰った」
「事情を聞いてくれ、と言われましても、こちらも規則ですので……」
「ご期待に沿えず申し訳ございません。ニコラス様の今後の活躍をお祈り申し上げます」
この街にある残り三つのギルド全てに断られた。
これじゃ、冒険者になるなんてこと、夢のまた夢じゃないか。
「ん、雪」
今日はひどく寒い。
珍しく雪まで降り始めたようだ。
周りでは、クリスマスだからかカップルが雪を楽しんでいる。
いつもは幻想的に思える雪も、今日ばかりは心を寒くするだけだった。
ぐ~。
「寒いなぁ……すいたなぁ」
投げつけられた袋の中には、金貨銀貨合わせて一万ゼニ入っていた。
当分は食べて行けるが、それもいつまで持つか分からない。
連日の残業で眠気も凄まじかったが、疲れからか、今は空腹の方がひどかった。
「とりあえず、夜ご飯だ。宿はその後探せばいいや」
行きつけの定食屋に向かって歩き出す。
が。
「なんだ、騒がしいな」
定食屋に向かうまでの道に規制線が張られている。
「街中に魔獣が出たそうよ」
「あらやだ、物騒ねぇ」
「しかも姫様も参加されるクリスマスイベントが襲われたとか」
「あらそうなの!? 心配ねぇ」
「騎士団は何してんだよ」
魔獣!?
この街中にか!?
「すみません、通りすがりの冒険者です、魔獣はどこにいるんですか?」
僕は気づいたら騎士団の人にそう声をかけていた。
多分、深く考えてなんかいなかったんだと思う。
ただ、そこに困っている人がいるから。
人を助ける理由なんて、それだけで十分だ。
それに、僕だって元々は冒険者ギルドにいたんだ、魔獣相手なら戦える。
「おお、救援感謝する! 魔獣は広場にいる! 大きなクリスマスツリーのある広場だ!」
よかった、冒険者ギルドを追放されたことは知られていないようだ。
「分かりました、ありがとうございます」
急ごう。
僕は疲れた体に鞭打って現場へと向かった。
◇◇◇
グオオオオオオッ!
辺りに轟く魔獣の雄叫び。
「くそ、なんなんだこの化け物は!」
「距離を取れ! 姫様をお守りしろ!」
「救援はまだなのか! もう持たない!」
大きなクリスマスツリーがある広場。
複数の騎士団員、負傷しているものも多い。
その後ろにはこの国の第三皇女、マリー皇女がいる。
それと対峙している、ライオン型の魔獣。
人の二倍はあろうその巨体で、今にも飛びかかろうとしている。
あと百メートル。
「ぐああああっ!」
まずい、騎士団の防衛網が突破された!
あと、五十メートル。
「きゃああああっ!」
「姫様お逃げを!」
逃げようとするも、蹴躓いて転んでしまうマリー皇女。
悲鳴があたりにこだまする。
魔獣の鋭い爪が振りかざされた。
あと、十、メートル。
――間に合えーっ!!
グオオオオ――
「《チート・シングル》! 攻撃力上昇!」
ザシュッ。
魔獣の動きが止まる。
マリー皇女に振り下ろされたその爪は、顔まで十センチの距離にまで迫るも、そこから動くことはなかった。
グオオオオオオッ!
断末魔をあげて霧散する魔獣。
あと一秒でも遅かったら、間に合わなかっただろう。
「ご無事ですか、マリー皇女殿下」
「あ、あなたは……ニコラスさん!?」
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