【クリスマス・ざまぁ】「ぼっちで無能」とブラックギルドを追放された僕、ぼっちのみ使える《チート・シングル》で無双する。クリスマスだからって僕に言い寄るのはやめてくれ、僕は皇女様の専属護衛なんだ
1. クリスマスイブの追放(12月24日12時)
【クリスマス・ざまぁ】「ぼっちで無能」とブラックギルドを追放された僕、ぼっちのみ使える《チート・シングル》で無双する。クリスマスだからって僕に言い寄るのはやめてくれ、僕は皇女様の専属護衛なんだ
獅子男レオ(ししおれお)
1. クリスマスイブの追放(12月24日12時)
「ニコラス、お前もうリストラだわwww うーん、追放!」
冒険者ギルド「ヨーキャ」の事務室に、ギルド長ウェイの声が響いた。
「え……急になぜなんですか!?」
「それが分からないって、お前やっぱり無能だなwww お前のスキル、何だっけ?」
スキルとは、一人一つ与えられる才能のことだ。
剣士なら《剣士》、魔術師なら《魔術師》のスキルが与えられるのだが、たまにそれらの枠に当てはまらないレアスキルが与えられる。
僕の場合は……。
「……《チート・シングル》です」
《チート・シングル》。
パーティーを組んでいない時に限り、攻撃力がわずかに上がるスキルだ。
つまり。
「陰キャでぼっち専用の外れスキルなんか無能すぎてウケるんだけどwww 俺らみたいな有能ギルドには合わねぇんだよ! ぎゃはははwww」
確かに、《チート・シングル》はパーティー向きのスキルではない。
でも。
それでも。
「でも、今まで一緒に協力して戦ってきた仲間じゃないですか! ギルドの雑用も全部やってきたし、みんなにお願いされたことはちゃんとやってきて――」
「仲間ぁ? え、お前それマジで言ってんの? 俺らが? お前と? 仲間って? 腹痛てぇwww ウケるwww」
前からウェイたちが僕のことを馬鹿にしているのは薄々気づいていたが、まさか仲間とすら思われていなかったとは……。
「俺らがお前を仲間に入れてたのは、ただのおもちゃだよwww」
おもちゃ……?
「お前がいつ自分の無能に気づいて辞めるか賭けてたんだよwww 僕はお前がもっと早くやめるってのに賭けてたのに、お前が自分の無能に気づかないせいで負けたわwww バカもここまでくると立派だなwww」
お前ら、僕を賭けの対象にしてた、のか……?
「規定でギルドに入ってから三年はクビにしちゃいけないことになってたから今まで待ってたんだが、それももう終わりだわwww 二度と顔見せんなよ、陰キャくん?」
「ちょっと待って、僕はまだ――」
「ねぇまだ~? ウェイ君遅~い! 一緒にお昼食べよ~」
「そんな陰キャほっとこうよ、今日クリスマスイブなんだし!」
「おっけ~すぐ行く~」
……ダメだ、話すら聞いてくれない。
「あ、そうだ。規定で一応退職金やらねぇといけねぇんだったわ。だっる……」
バンッ。
「っ!痛っ……!」
大きな音をたてて、小銭が入った袋が鼻に当たる。
「ちゃんと受け取れよ~これだから運動神経ないノロマは使えねぇんだよwww」
だからって、小銭入りの袋を顔目がけて投げるやつがどこにいるんだよ。
大体今までも、自分たちだけ遊んで、雑用は全部僕に押し付けて来たこと、あまりに酷すぎないか?
激痛で涙目になりながら、僕は今までのことを思いだす。
「おい、いつまで突っ立ってんだよ、ほら、部外者は出てった出てった! 推薦状なんてやらねぇからな」
「ねぇウェイ、は~や~く~」
「ちょっと早いけど、もうクリスマスパーティー始めちゃわない?」
「お、やるか? じゃあ今日はもう仕事終わり!www」
「さすがウェイ! 今日も?」
「「ウェイは?」」
「「「いい波乗ってんね~!」」」
――僕は元々、冒険者になりたかったんだ。
でも「陰キャでぼっち専用の外れスキルだから」と仲間外れにされてギルド事務所で雑用をやらされたり、戦闘でも僕のことはほとんど無視されたりしていた。
それでも自分のやっていることも必要なことだと、これも協力の形なのだと言い聞かせてきたが、もう我慢の限界だ。
――こんなギルド、こっちから願い下げだ。
「今までお世話になりました。皆さんお元気で」
僕は一応の礼を尽くすと、今まで働いてきたギルドを後にした。
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