第3話 邪神と契約?
(じゃしん……邪神か……まあ、人様を動けなくして要求を突き付けるなんざ、悪人決定なんだがな。それで邪神って、イタすぎじゃね? のじゃのじゃうるさいし、姿はのじゃロリか?)
『我が名乗ったわけではない。そなたの世界の悪魔と同じじゃ。人によって貶められたのじゃ』
(へ~)
『まだ信じておらんようじゃの。まあよい。続きじゃ。
我はそなたの言うようにこの事態を何とかしようとした。まず魔素の流入を防ごうとした。ほぼ全力で次元の穴を塞いだが、遺憾ながら完全にとはいかなかった。
千年前で大気中の魔素比率がおよそ10%にまで急増し、今も少しずつ漏れ出している。
我はなけなしの力を使いできるだけ人々に警告した。魔物が増え凶暴化する。ダンジョンに気をつけろとな。次元の穴を塞ぐのに精一杯の我にはそれぐらいしか出来なんだ。笑うがよい。神を名乗ってこの体たらくじゃ』
(うん……その、ご苦労サマ? あ? でもそれと邪神呼びと何の関係が?)
『うむ。我がこの事態を異世界からの侵略と考えた根拠でもあるのだが、我の神託に前後して我の構築したこの世界の秩序が書き換えられた。ふむ……そなたの知識でいうと、システムが無断でアップデートされたようなものじゃな』
(ああ、ハッカーとかクラッカー? なんとなくわかる。それで?)
『うむ。姿は確認できぬが、間違いなく高度な知性を持った存在であることは確かじゃ。そやつはあろうことか、そなたの知識にある《ステータス》を我の世界の人間に導入しおった。数々の魔法スキルとともにな』
(ステータス? この世界、元々なかったのか?)
『人が生きるのに必要か? そなたの世界の神も実装はしておらなんだろう?』
(実装て、ゲームじゃないんだから……まあ、なかったけど)
『そなたの記憶を見て理解した。姿の見えぬそやつはこの世界をゲームの世界にしようとしたのじゃろう。千年前のことの上、そなたの世界に魔素がほとんどないゆえ除外したが、そうでなければこれほどピンポイントにこの世界の状況を把握しているそなたの世界の神が第一容疑者じゃぞ』
(今度は容疑者かよ。まあ、ウチの世界の神っていわれても、いるなんてこれっぽっちも信じてないし……あ、でも、次元越えは時間も跳躍するって聞くし、自称邪神もいることだし、アリよりのアリか? うわー、そう考えると怖くなるぞ。自分の世界は変えたくないからほかの世界に手を出したとか? うわーありそうで怖い。あー、しかし、神がいるなら何の仕事してんだろうな? 庭師的な? それとも牧場とか養殖場の職員とか? 死後の魂を回収して販売? ほかの世界に純地球産ブランドの魂を売り込むとか? あーやだ、ブラック臭がする。他人事とは思えない。ストレスが溜まってゲームに走る姿が想像できちゃう。同情するよ。でも、人間養殖するなら養殖環境もっと気遣ってほしい。もっと肥え太るように甘やかしてほしい。あ、まさか不幸な魂ほど高く売れるとかじゃないだろうな? フォアグラだって虐待と非難されるけど高級料理らしいし。食べたことないけど……)
『そなた、何を言っておるんじゃ?』
そろそろ厭きて現実逃避し始めた男であった。
(ああ、自称邪神サマ、続きをどうぞ)
『我が自称したわけではないというに。我はこの地を創り守護しておる、いわば土地神じゃ』
(土地神? なんか響きがしょぼい……こう、創造神とか世界神とか……)
『しょぼくって結構。我はこの事態で力の差を思い知った。今ではこのダンジョンで次元の穴を塞ぐのに精一杯、この世界すべてを掌握しているとはとても言えぬ』
(ま、まあ、がんばっているんだから……そ、それより時間もないことだし、話の続きを)
『そうじゃったの。我が邪神と呼ばれる原因じゃったな。システムについてはそなたの復活後詳しく説明するとして、一つだけ。そのシステムに妙なスキルが配られた。《神託》といって一度だけ神が質問に答えてくれるというものであった。無論我のことではない。そのシステムを創った異世界の神のことじゃろう。
すでに当時システムは神からの賜り物とされておって、おそらく質問者は感謝の気持ちで尋ねたのじゃろう、「魔物に気をつけろと警告してくれたのは貴方様ですか?」とな。
システムはバカ正直に答えたのじゃ。「違う」とな。質問者も質問者じゃ。魔物発生の原因でも聞けばよいものを。まあ、その場合はシステムは我のせいにしたかもしれぬで、結果は変わらなかったであろうがな。
《神託》を受けた者たちは困惑した。挙句その結論が、システムこそ真の神であり、警告は実は犯行予告で、それを出したのは人類を滅亡させようとする邪神に違いない。というものであった。おかげで我は邪神認定じゃ。
それ以後、目的は達成されたのか、その《神託》スキルは人間に現れることはなかったのじゃ。
これでは力を取り戻し、改めて神託を下したとしても誰も信じるものはおるまい。難儀なことじゃ』
(よくあるといえばよくあるシチュエーションだな。理解できた。で? 俺はどうしたら復活できる? 邪神と契約って、世界を滅ぼせってか?)
『邪神ではないというに。我からすればシステムこそ邪神の仕業じゃ』
(まあ、どっちでもいいけど。で? 結局俺に何させようっていうんだ?)
『うむ。簡単に説明したが、おおよそは理解したであろう? この事態を引き起こした元凶はともかく、原因は魔素の増加にある。よってそなたには魔素の回収をしてもらいたい』
(長々と話を聞いて結局はそれだけかよ。まあ、確かにバックグラウンド知らないと、ハイともイイエとも答えられないしな。それで? もし断ったら……)
『当然放置じゃ。体感時間で、あと10分もしないうちに臨終する』
(それはひどくない?)
『穴の封印に全力だと言ったじゃろう? 協力できない者に割くリソースはない。まあ、この世界で邪神扱いされておる我に協力しようとする人間など滅多におらん上、人跡未踏の世界最大ダンジョンの最深部を訪れる人間もおらぬ。そこに突然現れたのが異世界人のそなたじゃ。正に千載一遇よ。期待はしておる』
(そんな期待されても……)
『あと5分じゃ』
(ずるいぞ! 急にカウントが早くなった!)
『ほれほれ。早く決めんと死んでしまうぞ?』
(千載一遇じゃなかったのか! 俺が死んだら回収どうするんだよ!)
『神に駆け引きしてどうする? 我は神ぞ? 次の機会を千年でも万年でも待とうぞ』
(わ、わかった! わかりました! ぜひ協力させてください!)
『うむ。その言葉、偽りはないな?』
(ホント、ホント! うそつかない! だから早く活き返えして!)
『まだ死んではおらんのじゃが、まあ、確かに限界じゃの。よし、では契約はなった! 身体を回復させようぞ。ああ、精神を元の状態に戻すので復活時は相当痛いが、生きている証じゃ。とくと堪能するがよい』
(え? なんかいやな言葉を聴いた気が……ギャ)
「ギャー!!!! 痛いーーーっ!!!!! 死ぬーーーーっ!!!!」
ダンジョン最奥で男の絶叫が鳴り響いた。
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