第3話二百人目

「二百人!」

 俺の一撃を喰らった男は仰向けになり倒れた。

 金髪女が眠った最中俺は新宿の裏路地に入り喧嘩をしていた。

 やっぱりここが一番俺らしく居られる場所だぜ。

「おら! 次」

 次の奴を殴ろうとしていたら全員地面に転がっていた。

 雑魚しかいねーのかよ。


 新宿の裏路地から出て表に出ると金髪女がいかにもチャラそうな男が囲んでいた。

 別に助ける義理はないが知り合いだから···な。


「おいお前ら何してんだよ」

 振り向いた男は俺の顔を見た瞬間に慌ててどこかに消えてしまった。

 顔をうつむいているので、まだ俺が助けに来たと気付いていなかった。

「おい、テメー何でこんな場所に来てんだよ?」

 顔を上げるとネオンライトの光で涙が光っていた。

 また泣いてんのかよ。

「起きた時にあなたがいなかったからもしかしてこの場所何じゃないかと思ったら、やっぱり案の定···」

右こぶしが不良を殴ったままの状態だったので血がついていた。

 それに気付き金髪女の言葉がとまった。

「人間にはな隠し事が誰にでもある。俺でいったらこれがそうだ」

 右こぶしを金髪女の目の前にだした。

「まぁいろいろあるわよね」

 それだけかよ。

 もっと怖いとか恐ろしいとかって反応が来ると思ってたんだけど。

「あーいい事思い出したわ。ちょっと来いや」


『barフラミンゴ』に金髪女を連れて足を運びカウンター席に座ると、オカマのマスターが何も言わずに酒をだされた。

「まぁ飲めよ」

 金髪女は何も疑いもせずに酒を一口で飲み干した。

 金髪女は頭がクラクラしてカウンターに倒れた。

「一ちゃんも悪い人ね」

「いいんだよ···」

 俺は言葉を詰まらせて真剣な顔でマスター見た。

「どうしたのそんな怖い顔して?」

「マスターこいつ死のうとしてるぜ。理由は何なのかは分からない。だけどこいつは全てに絶望し腐っている」

「え、何でそんな事分かるの?」

「分かるさ。だって俺も···」

 マスターは俺がその後の言葉が何かを理解したかのようにもう何も喋らなかった。


「ここは?」

「俺の部屋だ」

 金髪女が薄っらと目を開けた瞬間に俺は応えた。

「今日は学校行くぞ」

 金髪女はそれに対して反応はなかったが、スッと立ち上がり自分から玄関を開けていた。


 学校に着くとお互いの教室に別れたが、俺は自分の存在意義がないクラス何て興味が無いので屋上に向かった。

 扉を開けると既に先客がいた。

 その女はいまにも屋上から身を投げ出しそうにしていた。

「おい、何やってんだ」 

 その女性の金色の髪が俺の声に反応して振り返った。

「案外冷静なんだね」

「まぁな。知ってたからな。テメーが死のうとしてる事何て。一番最初に会った時、あんな時間に屋上にいる人何て教室から省かれてるとしか思えねーよ」

「結局あたしを助けてくれる人何て、理解してくれる人何て誰もいなかった。だからもう疲れた。あたしはもうここで死ぬ」

 金髪女は再び振り返り、両手を広げて身を投げ出したが俺は腕をがっちりと掴んだ。

「え!?」

「喧嘩王の瞬発力なめるんじゃねー」

 俺と金髪女までの距離は数十メートル離れていたが光の速さで金髪女の手を捕まえた。

 そのまま力ずくで安全地帯まで戻した。

「どうして!? もういいんだって!」

 具体的な理由も言わずにただ叫んでいるだけたから正直分からない。

 分からないけど···。

「俺の視界で死ぬんじゃあねー。これから先テメーの人生がどうなるか何て知らないし、興味もない。ただ今の世界だけは変えてやる」


 俺は屋上を飛び出し三年生の教室に向かい男女関係なく半殺し状態にした。



 一ヶ月後

「一ちゃん学校に行かなくてもいいの?」

 barのマスターが学校に行ってない俺に気を遣い、いつも何か話しかけてくれる。

「いいんだよ。教室であれだけ騒いだら行けねーよ」

「あれはあの子の為にやった事でしょ?」

「別にそんなんじゃねーよ」

 めんどくさくなりそうになったので『barフラミンゴ』を後にした。


 外に出ると暦の上では秋なのに身体中に纏わり付く暑さは消えないままだ。

 暦では秋だけど絶対夏だよ。夏。

 俺はやっぱりこの季節が嫌いだ。


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喧嘩王 てるた @teruo0310

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