第2話 サンタさんの仲間
奈海は一言で言うと普通の子だ。一般的な家庭に生まれ、優秀な兄と比べて末子の奈海は特に目立たなかった。それでも、彼女は普通であることを楽しんでいた。子供のころから、洋菓子が大好物なので、将来の夢は洋菓子店のオーナーになることを早めに決めた。勉強はそこそこできたけど、運動は苦手、そのせいで青春期からちょっとぽっちゃりしている体型になった。男の子はきれいか可愛い系、そして瘦せ型の女子が好みで、奈海はそういうのをあまり気にしなかった。男にモテなくても、彼女は性格がいいし、誰とも親しくなれるから、周りの男友達は彼女のことを恋愛対象というより、同性の友達のような感覚で接していた。
初めて燦太と出会ったのは専門学校に入った時だった。同じクラスで席も隣同士だったから、すぐに親しくなった。燦太は自分と同じように普通だと思い込んでたけど、実際に彼が洋菓子を作る時を見た瞬間、全然普通ではなかったと気づいた。彼の高い集中力と美しい洋菓子を作りたいという情熱に刺激され、奈海は彼に付いていけるため必死に頑張っていた。卒業後、奈海と燦太は別々の就職先に行ったが、二人は定期的に会って、勉強のためいろんな店の洋菓子を食べに行った。その後、資格試験に合格し、一緒にパリで3年間留学と修行していた。
奈海の初恋の相手は自分の幼馴染だった。その彼とは長い間友達のままだけど、高2の時いきなり向こうから告白されて、その後何となく付き合い始めた。しかし、奈海にとって二人の関係は友達からの延長線みたいな感じで、特に深く考えずに彼の告白を受け入れた。だから、二人は高校卒業して、彼は大学へ自分は専門学校に入った後、一緒に過ごせる時間が減り続け、自然消滅の形で別れてしまった。それでも奈海はあまり悲しい気持ちになれなかった。今、その彼はもう結婚し子供も二人がいて、奈海が今まだ独身ということを心配して、時々奈海に彼氏を紹介したいと言ったが、彼女はそれを断った。
実は奈海には誰にも知らない秘密があった。
燦太に対する気持ちがいつのまにかともに戦って来た友情から愛情に変わってしまった。初めて気づいた時は二人がパリにいたころだった。当時、店の同僚の婚前パーティーに出席した二人は飲みすぎで、燦太を家まで送った時彼がいきなり奈海にキスした。それはただ唇に触れるぐらいのレベルじゃなくて、本当に舌が絡み合うような熱いキスだった。だけど、燦太はそれ以上のことをせず、酔いつぶれてそのまま寝てしまった。奈海はその時初めて燦太を異性として意識し始めた。
翌日、燦太は何も覚えていないみたいに、いつものように奈海と接した。彼女は彼の反応を見て、やっぱり燦太は自分の行動を後悔しているんじゃないかと思った。奈海は自分が女性として魅力がないから、燦太は自分を好きになるなんてありえないと思い、だから燦太にあの夜のキスについて聞く勇気はなかった。
だけど、燦太はあのキスをしっかり覚えていた。なぜ自分が奈海にキスしたのか理由が分からなかったけど、これ以上二人の関係を複雑化したくなかった。だから、記憶がなかったかのように誤魔化した。その後、燦太はわざと奈海に自分が今だにある人に片思いしているということを打ち明けて、二人が恋仲になる可能性を徹底的に消したかった。
奈海はそれ以来、燦太になるべく今まで通りの態度で接した。表から見ると、二人はとても仲良かったビジネスパートナーと親友だけど、奈海は内心で苦しかった。燦太とは未来がないと分かっていたが、それでも離れられない自分はあまりにも情けないと思った。
だから、奈海は自分に最後の期限を与えた。きちんと燦太に告白して、もし断られたら彼のことを諦めて、店の経営を辞めることも検討する。絶対受け入れるはずがないと思った奈海は自分の誕生日に燦太に告白した。燦太の返事はまさかのOKだった。その夜、二人はようやく結ばれて、公私のパートナーになった。
だけど、奈海の幸せは長く続かなかった。
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