白里りこ

 ル、ル、ル。

 何となく、ハーモニー。でもちょっと納得できません。


 ルー、ル、ル。

 悪くはないです。でもベターなだけで、ベストではありません。


 また少し変えてみます。今度は装備品を操作します。曲を作る時は実際に楽器を奏でてみるのが一番なのです。本当はピアノがいいのですが、私の装備品にはありません。バイオリンしか持ってないので。

 そういうわけでアカウントの装備品の中からバイオリンを出して、実際に奏でてみます。やっぱり何となく納得がいきません。


「カクヨム」なんだから小説を書けよ、というツッコミはよく聞きます。でもね、自分が書いた小説に、自分が作ったテーマ曲を添えるのは、本当に楽しいんですよ。一度曲作りから小説に入ってみるのも悪くないものです。「カクヨム」の多面的な創作支援サービスには本当に頭が下がります。


 さて、今作っている曲は小説のテーマ曲ではありません。今日はクリスマスイブ。何となく、こういうイベントの時って作品を作りたくなるじゃないですか。クリスマス小説もいいですけれど、さっきも言った通り、曲から小説に入るというのも、悪くないものです。


 和音を少々。一通り連なると、一瞬周りが自分だけの世界になって、とても気持ちがいいです。何となくですが、コード進行は出来た気がします。


 ただ問題としては、コードだけ出来てもそれは伴奏でしかないので、肝心のメロディがないといまいち締まりがないというか、曲として成立しません。考えます。


 こういう時は時間を忘れたいものです。いくら音で自分の世界を作れると言っても、やっぱり外からの刺激は断ちたい。なので私は能力を使います。「カクヨム」が作品を元に作家に与えてくれる能力。


「『ぷわわわー』」

 言っておきますけど作品名です。今年のKACに出しました。音楽と平和をテーマにしたショートストーリーで、自分でもそこそこ気に入っています。


「エイヴァ・ブラウン」

 これは登場人物の名前。


 私のこの一言をきっかけにして、時空が歪みます。辺りがオーラに飲み込まれ、モノクロームの世界になります。今は時間を止めました。この瞬間、「カクヨム」の世界で動けるのは私だけ……いえ、他の作家さんの中にも「時を止める」くらいの能力を持っている方はいるでしょうけど、でも少なくとも、私の半径十メートルくらいの範囲では、私だけ。


 ジャケット姿の男性が硬直しています。ワンピース姿の女性も硬直しています。みんなが固まっている中、私だけが動けます。

 私はバイオリンを奏でます。みんなが止まった時間の中で……。


 しばらくして、一通りのコード進行らしきものができました。

 でもやっぱり、メロディは……。


「『ぱーぱーぱー』」

 言っておきますけどこれも作品名。ものの魂を抜きとれます。

「魂」という概念が少々曖昧なのですが、私は今、奏でたバイオリンから音の記憶を抜き取りました。言ってしまえば外部メモリに保存したような形で、とりあえずこの「魂」さえあればいつでも、私が作ったコード進行を再生できます。


 さて。

 メロディ、どうしようかなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る