私たちの「小説」へのプレゼント
飯田太朗
ナナシマイ
ラ、ラ、ラ。ラ、ラ、ラ。
鼻歌。まぁ、特に意味はないメロディだけれど、今日はこんな気分なんです。
ラ、ラ、ラ。ラ、ラ、ラ。
うん。いい感じです。曲に起こそうかな。
「カクヨム」で小説以外の芸術をやるのならば、一度その芸術を小説に書く、という手順を踏んで、公開ボタンを押さないといけません。アカウントの装備品に楽器を入れておく、という手はありますけれど、私みたいに色んな楽器をやりたい人からすればそれは手間なのです。でも逆に言うと、小説にさえできればどんな芸術でもできます。「カクヨム」なんです。文字に起こせばいい。
さてさて早速。
〈音を譜面に起こしていく。カリカリ。ペン先で紙の表面をひっかく。時々鍵盤を叩く。たん、たん、たん。ちょっと違うかな〉
おっと。思考が文面に漏れてしまう。まぁ、音の調整をするにしてもまた文面に起こさないといけないので、仕方ないと言えば仕方ないのですが。
さてさて公開ボタン。小説内に書いた曲がVR空間で現実になります。聴いてみます。うーむ。もう一工夫。
〈音を譜面に起こしていく。カリカリ。ペン先で紙の表面をひっかく――〉
音さえ起こせればいいから文面は使い回しでいいのです。さらさらさらー。
もう一度公開ボタン。ふむ。何となくさっきよりはいい感じ。でもなぁ。
じっくりと考えます。こういう時は歌いましょう。ラ、ラ、ラ。ラ、ラ、ラ。
うーん。でもこの曲ができたとして、誰に聞いてもらいましょう?
公の場に出しておけばいいのでしょうか。でもせっかくなら誰かに聞いてほしいしなぁ。
あっ、今日ってクリスマスイブか!
じゃあ、クリスマスっぽい曲にしましょう。どんな感じがいいかなぁ。思案します。ほんの少し、鼻歌を。ラ、ラ、ラ。
くるくると、指揮棒みたいに杖を振ります。魔法の杖。私の念が溢れたのでしょうか。杖の先端から音符が零れて、それが地面にぶつかると音になりました。なるほど。ちょっと魔力を使うけれど、この杖を使った魔法で作曲するのも、ありかもしれませんね。
目を閉じます。意識を杖に集中させて、それから「気」を感じます。足の先からビリビリと、何かが駆け抜ける感じがしたら始まりの合図です。私は杖を振ります。いち、にっ、さん!
杖の先から音が溢れて、私の髪がぽうっと赤く染まります。ティアラは落ちないよう、ちゃんと頭の上に乗せて。
先程の「作曲場面の描写」による作曲とは違います。無作為に溢れ出る音の中から規則性を見出し、それを捕まえ、それを繋げ、ひとつのメロディに。
ララララ、ララ、ラララ……。
メロディができたかもしれません。でも、そうだなぁ、伴奏に当たる部分が欲しい気もします……。
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